商品先物取引で、米価変動リスクの回避ができる理由
商品先物市場には、経済・社会的な機能・役割が主に三つあります。
(1)価格変動リスクのヘッジ機能
(2)資産運用機能
(3)透明で公正な価格の形成・発信機能
さらに、「価格変動リスクのヘッジ機能」の補完的な機能として、「換金・金融機関機能」「実物取得機能」「在庫調整機能」の三つがあります。順番に紹介しましょう。
(1)価格変動リスクのヘッジ機能
商品先物市場には、将来の価格変動リスクを第三者へ移転、回避する場を提供するヘッジ機能があります。「ヘッジ=hedge」には、「防御、予防する」「両方に賭ける」といった意味があります。
転じて「価格変動リスクのヘッジ」とは、価格の上昇、下落にかかわらず「損益が発生しない」状況を作り出し、価格変動による損失を回避することを指します。商品の現物価格と先物価格は、原則、連動します。
また、先物価格は取引最終日には現物価格と同値に収れんします。これら値動きの特徴を利用して、現物の価格変動により発生する損益を先物取引の損益で相殺することにより、将来の購入価格や販売価格を固定することが可能となります。ヘッジ取引には「買いヘッジ」と「売りヘッジ」があります。
○買いヘッジ
「買いヘッジ」は、将来の価格上昇リスクに備えるものです。たとえば、将来、米の購入を予定している時、今後の価格変動に関係なく、現在の価格に近い価格で米を購入したい場合や、現時点で購入すれば発生する米の保管コスト(金利・倉庫費用等)の負担を避けたい場合などに用います。
米加工業者A社は、半年後に米204俵(=1万2240キログラム)を購入する予定である。現在の価格1万5000円/俵であれば利益は確保できるものの、万が一、半年後に購入価格が大幅に上昇すれば利益を確保できない恐れがある。そこで、A社は米先物市場で204俵を買い建て、「買いヘッジ」を行うことにした。
例1では、A社の米購入費用は、半年後、米価格が下落すれば少なく済みます。一方、米価格が上昇した場合、利益が確保できなくなることもあり得ます。つまり、米価格の変動に応じて、購入費用にブレが生じる状態です。
そこで「買いヘッジ」の出番です。[図表2]のように、ヘッジ取引を行うことにより、価格上昇・下落のいずれの場合であっても、A社は米購入価格を1俵あたり1万5000円に固定することができました。
加えて、米加工業者A社は半年前に米を購入すれば必要となっていただろう倉庫費用を節約することもできています。
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