競争の苛烈さで知られる「美容業界」に飛び込んだ、証券会社元ディーラーの筆者。美容室1号店の成功を受け、2店舗目のオープンに向け動き出します。しかし求人難をはじめ、業界特有の苦難が次々と襲い掛かったのです。ついには月300万円もの赤字を抱えることになった筆者が下した、赤字補填の秘策とは…?

2号店オープンを狙うも…重くのしかかる「求人難」

CIEL:筆者たちが立ち上げた美容室サロン。大阪、天六に第一号店、難波に第二号店をオープン。

筆者:証券会社でディーラーとして勤務後、営業部へ転属。成績を残すが、顧客の意に沿わない商品を販売するのが心苦しく、その後個人トレーダーとして独立。ひょんな縁から美容業界へと飛び込むことに。

伊藤さん:難波店の店長。新たに筆者たちの仲間に加わったベテラン美容師。

田中さん:筆者を美容業界へといざなったキーマン。

 

天六店の売り上げは予定通り伸びていった。美容室検索サイトとは個人店では投資できないような高価格プランを契約しているので、集客はやりやすくなっている。そして他の低価格サロンよりも安い料金、お洒落でくつろげる内装を揃え、正社員を入れることでホスピタリティーを高め、雰囲気の良いサロンを作っていった。だから、お客様が定着し、売り上げが上がるのは当然の結果だと筆者は考えていた。

 

売り上げが高いのにそれほど利益は出ていなかったが、これは想定内の話だった。最初の1年は店の認知度を高めるため美容室検索サイトとは高額の契約をしていたが、これは徐々に見直すことができる。

 

スタッフの給与体系を今までにないほど高水準にしていることも利益を圧迫している。しかし、これは求人のためには必要な費用だ。利益は店舗数を増やして上乗せしていけばいい。考え方は株取引と同じ。勝てる仕組みを作り上げていく――状況に合わせて、勝率の高い作戦を立てる。それを実行してその結果からまた次の作戦を練る。今までのところ売り上げに関しては計画どおりだ。

 

問題は求人――美容業界が求人難だということはわかっていた。だからこそ給与体系を他店にはないレベルにまで引き上げて求人を出しているのだが、応募がこないことは想定外だった。今後利益を上乗せしていくためには3、4店舗くらいは考えなければならない。そのためには求人の問題が最重要課題になる。

 

筆者は求人がかからない原因はCIELの知名度の低さが原因だと分析した。それならば2店舗目を利益はトントンでもアンテナショップとして、求人がかかりやすそうな場所に出そう。大阪であれば梅田か難波に出店すれば、多くの人の目に触れてCIELの認知度も上がるだろう。

 

ただし梅田や難波は天六よりも家賃が高い。店の内装も街の雰囲気に合った高級感のあるものにしなければならない。利益という面では天六よりもさらに厳しいことになる。しかし、ここを乗り切らなければ次の展開が見えない。

 

ここは、勝負だ。

 

 

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よそ者経営

よそ者経営

山下 拓馬

幻冬舎MC

大手上場企業の安定から飛び出し個人投資家へ転身。 未経験の美容業界でオープンした美容室CIELは、設立5年で全国30店舗を展開する急成長を遂げた。 その成功の歩みから未来への展望まで、すべてを語り尽くす――。 第1章…

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