(※画像はイメージです/PIXTA)

競争の苛烈さで知られる「美容業界」へ飛び込んだ、証券会社元ディーラーの筆者。苦楽を共にしたスタッフの不正行為にショックを受けるも、立ち直って経営は黒字化。しかし、コロナ禍の直撃を受け、300万円の手付金で掴んだ「極上の出店先」を見送ることに…。経営者として見つめていた「その先」とは?

「不正の起こる隙間」のない仕組みづくりを

CIEL:筆者たちが立ち上げた美容室サロン。大阪、天六に第一号店、難波に第二号店をオープン。

筆者:証券会社でディーラーとして勤務後、営業部へ転属。成績を残すが、顧客の意に沿わない商品を販売するのが心苦しく、その後個人トレーダーとして独立。ひょんな縁から美容業界へと飛び込むことに。

平山さん:twitterで出会った、美容室の経理業務の経験者。

伊藤さん:各店舗の店長を統括するエリアマネージャー。

国生さん:筆者が経営スタッフとして招いた美容師。

 

田中さん――発足当初からの仲間が売り上げを抜いていた一件で、筆者は人を、組織を管理することの難しさを思い知った。経営について、組織管理についての本を貪むさぼり読み、組織を強くするとはなにか。ノウハウを徹底的に勉強し、それを経営に応用していった。

 

2019年には会社全体の体制も大きく見直した。いままで各店舗に任せていた作業を本部で集中して行うことにして、不正の起こる隙間をなくしていった。この仕組みづくりのために、これまたツイッターで知り合った平山さん、また証券会社時代に同期で入社し、その後会計事務所に転職していた小西さんに入社してもらった。

 

平山さんは岡山の美容室2店舗を経営する会社で経理を担当していたのだが、大学での専攻は原子力工学で、電力会社やお菓子の製造業にも勤務していたという面白い経歴の持ち主だ。

 

岡山で奥さんと3人の子供と暮らしていたが、筆者の美容室経営の理念に共感してくれて、奥さんを説得して家族を連れて、大阪に引っ越してきてくれた。もしツイッターがなければ彼と知り合うこともできなかった。そしてその後訪れるCIELの大きなピンチも、彼がいなければ乗り越えることはできなかっただろう。

 

2019年5月、筆者に加えて国生さん、平山さんをOXY株式会社の役員として、難波の2店舗の店長をしていた伊藤さんを、店長を統括するエリアマネージャーとして役職に任命した。2019年にはフランチャイズオーナーをツイッターで募集し、次に示すとおりフランチャイズ9店舗、直営1店舗を沖縄から東京まで全国に展開していった。

 

2019年の年末にはフランチャイズ12店舗、直営11店舗、全国で合わせて23店舗を展開するまでにCIELは成長していた。2020年末には全国に33店舗展開する。美容室事業以外の展開も視野に入れ、OXY株式会社に死角はない。2020年1月、筆者はそう確信していた。

美容業界を直撃した「新型コロナ」の問題

ツイッターではどこよりも早く世界の情報を入手することができる。この世界には世界中の人に、どこよりも早く情報を発信したい、という人たちがいて、始終つぶやいてくれている。彼らをフォローしていれば世界でいまなにが起こりつつあるのか、把握することができる。経営陣も揃って、経営自体も軌道に乗ったことで余裕ができたため、2019年の秋ごろから筆者は株投資も再開していた。株の値動きを予想して作戦を立てるためにはツイッターは欠かせないツールだった。

 

2020年1月。中国内部の湖北省武漢で原因となる病原体が特定されてない肺炎患者が発生しているとの情報が流れ、1月末にはその感染が武漢で広がって中国国内に影響が出始めたことも筆者はツイッターで把握した。

 

この話を事務所で皆に伝えると、すぐさま平山さんが、

 

「中国製品の物流に影響が出れば、備品の調達に影響が出るかもしれないですね。在庫を各店舗で確認してもらいましょう」

 

そう言って各店舗にメールを発信していた。スタッフがしっかりしている、会社としての仕組みが整っていることのありがたみをこのころは余裕を持って味わっていた。2020年の出店目標は総計33店舗。すでに1月に2店舗オープンしている。この時はまだ、中国で広がっていたこの感染症が、出店計画に影響するとは思っていなかった。

 

2月。街にはまだ変わらず人が出歩いていたが、大手企業が出張などの人の動きを制限し始めるなど、国内でも少しずつ新型コロナウイルス感染を警戒する動きが見え始めていた。2月半ば、国内で初の新型コロナウイルス感染死亡者が出た。そして連休明けの2月25日。コロナ不安による世界同時株安。日経平均株価も下がり続けた。ニュース番組が、これはリーマン・ショック以来、世界恐慌のころと同じではないかと騒いだ。底の見えない不安、未来への漠然とした不安が国中に、そしてCIELのスタッフにも広がり始めていた。

 

美容業界に直接打撃を与えたのは、2月27日、安倍首相の突然の全国の小中高校への休校要請だ。この措置は当然大学にも波及した。3月は卒業式、4月は入学式。この季節は美容業界の繁忙期なのだが、今年はどうなるか。

 

「これはちょっと先が読めないですね。あちこちの大学が卒業式の中止を決めてます。予約のキャンセルも入りだしたみたいです」

 

国生さんが顔を曇らせて言った。

 

「3月、4月は厳しいことになりますよ」

 

と、平山さんは言う。

 

「そうですね、最悪の事態は想定していた方がいい。でも、コロナの影響は美容業界だけじゃないから。もっと影響が拡大するようならきっとなんらかの融資や助成金制度があるはずだから、平山さん、調べておいてください」

 

「はい、わかりました。融資、徹底的に調べます!」

 

平山さんの反応が速いのがありがたい。

 

筆者もツイッターやLINEを使って、さらに情報を集めた。感染はどこまで広がるのか。影響はどこまで及ぶのか。この新型コロナウイルス感染拡大の先が見えないのは筆者自身も怖い。しかし、そんなことは言っていられない。筆者は社長として情報を集め、先を読まなければならない。

 

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