マンションを徘徊、締め出され…「認知症独居老人」悲惨な末路

住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃しています。そのなかで、認知症になった女性への対応が問題になった事例を、作家の山岡淳一郎氏の『生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて』より一部を編集・抜粋して解説します。

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一人暮らしの「認知症高齢女性」めぐり大騒ぎに

分譲マンションは、世のなかを映す鏡です。戦後の復興から高度成長、石油ショック、バブル経済とその崩壊、さらに阪神・淡路、東日本大震災を経た日本の自画像が、マンションという共同体に映り込んでいます。社会の縮図といえるでしょう。

 

そのようなマンションに超高齢化と人口減少が濃い影を落としています。

 

二〇一九年三月、東京都内の一〇〇戸規模マンションで「認知症の人」への対応が管理組合理事の間で秘かに話し合われていました。一人暮らしの認知症の高齢女性が、昼夜を問わず、マンションの内外を歩き回り、あちこちで失禁してしまうのです。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

他家のメールボックスから郵便物を抜きとって大騒ぎにもなりました。有志が見守り役を買って出ましたが、なかなかフォローできません。女性は「緊急連絡先」を管理組合に届けていませんでした。

 

女性は、深夜、街に出てオートロックの玄関に締め出され、寒い公園で夜を明かしたこともあります。朝、散歩していた人が見つけて送り届けてくれましたが、肺炎を起こしていました。ひとつ間違えれば命が危うかった。管理費と修繕積立金の滞納も続いています。認知症の人への対応は、マンションのなかだけでは解決できない問題になりました。

 

「地域包括ケアセンターに相談して、グループホームに移ってもらうのが一番いいですよ。症状が悪化したら病院のほうがいいのかもなぁ」

 

「じつは民生委員に協力してもらって、地域包括のケアマネージャーさんに相談したのですが、抱えている要介護者のお世話で手一杯、とても余裕がないって断られました。お金の問題もあるし、どうしますかね」

 

「隣のマンションでは認知症サポートグループを作っているそうですよ。離れて住んでいる息子さんの了解を取って、認知症のお母さんの写真を近所のサポーターが持っていてね。徘徊しているのを見つけたら、お宅に連れていくらしい」

 

「でも、声のかけ方ひとつとっても大変よ。後ろから呼び止めたりしたら本人が驚いてパニックになる。認知症の人が「カラスは白い」と言っても否定したらダメ。カラスは白いねって言わなくちゃ。そういう接し方が大切なのはわかるけど、なかなか難しいわよね」

 

「病院に移すのは反対です。あの人、ベッドに縛り付けられますよ。もし自分が認知症になって、そんなことされたら嫌でしょ。だけど、どこまでかかわっていいのかなぁ」


議論は堂々巡りです。

 

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ノンフィクション作家
東京富士大学客員教授

1959年愛媛県松山市生まれ。出版関連会社、ライター集団を経てノンフィクション作家となる。
「人と時代」「21世紀の公と私」を共通テーマとして、政治、経済、建築、医療、近現代史、エネルギーなど分野を超えて旺盛に執筆。
ドキュメンタリー番組のコメンテーター、様々な団体やNPOなどに招かれての講演活動も展開。月刊誌『世界』(岩波書店)に「コロナ戦記」連載中。ネットのニュース解説メディア、デモクラシータイムス同人。

著者紹介

連載生きのびるマンション~「二つの老い」をこえて

生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて

生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて

山岡 淳一郎

岩波書店

建物の欠陥、修繕積立金をめぐるトラブル、維持管理ノウハウのないタワマン……。さまざまな課題がとりまくなか、住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃している。廃墟化したマンションが出現する…

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