住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃しています。そのなかで、「所在不明・連絡先不通」の空室が問題になった事例を、作家の山岡淳一郎氏の『生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて』(岩波新書)より一部を編集・抜粋して解説します。

相続したマンション、立地が悪いと損?

分譲マンションの空室率(三カ月以上空室となっている戸数の割合)に着目してみましょう。国土交通省が五年に一度発表する「マンション総合調査(二〇一八年度)」によれば、空室ありと回答したマンションの割合は全体で三七・三パーセントですが、築後三〇〜三九年では五六・四パーセント、築後四〇年超となると六八・八パーセントに跳ね上がります。

 

しかも、空室が全戸の二〇パーセントを超える危機的なマンションの比率は、築後三〇〜三九年で二・一パーセント、築後四〇年超では四・四パーセントに上昇します。築後四〇年が空室問題の深刻化する境目のようです。

 

築後四〇年超のマンションは、二〇一八年末現在、全国に八一万四〇〇〇戸あり、一〇年後に約一九八万戸、二〇年後は三六七万戸へと増えます。いまは空室が目立たなくても、建物の老朽化と、住民の高齢化という「二つの老い」が追い打ちをかけ、誰も住まない、灯の消えた住戸がマンションを蝕んでいくのは明らかです。

 

マンションの空室問題は、一戸建てとは異なる難しさをはらんでいます。相続人が遠方で暮らしていて、相続したマンションの立地が悪いと、住戸のリニューアルや売却、賃貸が困難になります。

 

設定できる賃貸料や売値が安くて採算に合わず、住戸は不良資産へ。余計な出費はしたくない、と管理費や修繕積立金の滞納が始まり、管理組合に累が及ぶのです。

 

相続人と連絡が取れれば、まだいいほうです。古いマンションほど、所有関係が不確かな住戸が増えます。前述の「マンション総合調査」によると、管理組合の名簿で所有者が直ちに判明しておらず、または判明していても所有者と連絡がつかない「所在不明・連絡先不通」の空室があるマンションの割合は三・九パーセント。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

ただし、築後三〇〜三九年のマンションでは、四・七パーセント、築後四〇年超は一三・七パーセントに高まります。築後四〇年超では、所在不明・連絡先不通の住戸が二〇パーセントを超える「お手上げ」状態のマンションが五・三パーセントに及んでいます。この割合は、今後さらに増えそうです。

 

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