不動産の相続は、必ずしもメリットだけとは限りません。収益性の低い物件を相続しても、支払った相続税はもちろん。その後も税金や維持費が出ていく一方で、なんのメリットは得られないからです。そのような状況を脱するには、資産の組み換えが不可欠なのです。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
「多くの土地を所有する=資産家の証」ではなくなった
土地の保有が財産の保有とみなされていた時代は、もうとっくに終わりました。土地を所有しているだけで収益がなければ、固定資産税や維持費がかかるばかりの「持ち出し状態」であり、資産とはいえません。
「収益性に富む土地」こそが財産であり、収益力のない土地は不良資産にすぎません。つまり、土地の所有数よりも土地の「質」にこだわって、選別していく時代になったのです。
複数箇所の土地や、規模が大きい土地の場合、所有しているだけでは節税対策はできません。土地の一部を売却し、その代金で賃貸マンション等を建築・あるいは購入することで、より収益を上げる不動産へと組み換えていくことが大切ですが、節税はそのプロセスのなかで実現します。節税という目的を見据えつつ、不良資産から優良資産への転換を行っていくのです。
いままでの節税対策の主流となっていたのは、所有地に借入で賃貸アパートを建てるという方法でした。多くの方がその方法を選択したため、いたるところにアパートやマンションが建てられ、その結果、駅から遠く、不便な場所に空室だらけの賃貸マンションが立ち並び、老朽化しています。
最近の相続税対策は、不良資産を売却・優良資産を購入して不動産運用をする資産組み替えが主流になりつつあります。 たとえば築古のアパートを所有している場合、賃料が下がって収益が上がらなくなった際に売却し、駅近郊の物件に買い替えて収益を改善する、といった具合です。
賃貸運営だけでなく、売却時も考慮した物件選びを
また、所有している土地が賃貸事業に適していないケースもあります。賃貸にするのであれば、最寄り駅から徒歩10分程度であることが第一条件です。周辺の住環境なども重要ですが、すでに所有地として持っている場合は、あとから環境は変えられません。賃貸事業をするなら、所有する土地が賃貸事業に適しているのか冷静にジャッジし、適さない場合は売却して、別の場所で賃貸事業をするようにします。これが資産組み替えです。
最寄り駅からの距離や周辺の環境、立地のブランドなどを基準に選択すれば、賃貸事業の運営はもちろん、売却の際にも有利になります。
たとえば、年間収入250万円の古いアパートを1億円で売却し、家賃が10万円の駅近の賃貸マンションを4部屋購入すれば、年間収入は480万円となり、約2倍近い収入が得られることになります。このようにして、資産価値の高い不動産へと買い替えていくのです。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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