せっかく立地のいい不動産を相続しても、そのまま放置してしまっては「宝の持ち腐れ」です。固定資産税を納めるだけのマイナス物件にならないよう、できるだけ早い段階での対策が望まれます。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
空地には適用されない「相続税の減免」
親から不動産を相続する予定の方は多いと思いますが、なかでも「空地」には十分な注意が必要です。空地は、持っているだけでは税金がかかるだけでなく、相続税の減額要素もありません。土地は建物を建てて住んだり、貸したりしなければ評価額を下げられず、資産防衛の観点から見て不利なのです。
アスファルトや砂利敷きに整備した貸し駐車場なら、相続時に貸付用小規模宅地等の特例を適用することができ、面積が200m2までなら50%の評価減を選択することができます。しかし、それ以外には評価を減らすことはできず、固定資産税も下げられません。駐車場は更地なので、空き地と同じ100%評価となってしまい、減額の余地はないのです。
「先祖代々の土地だから」という理由だけで、ひたすら固定資産税を納税し続けている方も少なくありませんが、そのような状態を放置せず、活用の道を探るべきだといえます。
空家を解体しても、固定資産税の負担は6倍増
一方、全国的に激増している空家が問題視され、平成27年2月には「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家対策特措法)が可決されました。老朽化して倒壊しそうな空家や、防犯上の懸念が生じるような空家に、行政が解体命令を出せるようになったのです。
そうなると、建物さえあれば土地の固定資産税が6分の1になるという優遇措置が使えなくなり、固定資産税が一挙に6倍へ跳ね上がります。活用していない空家は建物を解体しただけでは固定資産税が6倍になるわけですから、土地の再活用や処分、組み替えまでを真剣に検討する必要があるといえます。
「資産組み換え」で財産の価値を基礎控除範囲に収める
かつては「多くの土地を所有すること=資産形成」とみなされてきましたが、いまは違います。これから考えるべきは、多くの土地を持つことより、保有する不動産を組み替え、評価を下げて固定資産税や相続税を節税しながら、いかに収益を上げるかという点です。
資産組み替えのメリットは、売却したお金を原資として賃貸不動産を購入し、借り入れをすることなく、節税効果が出せることです。
不動産が多い場合は、資産組み替えをして財産をコンパクトにします。預金が多い場合は、賃貸不動産を購入して評価を下げます。このように財産を組み変えることでバランスを取り、基礎控除の範囲内に収まるように対策を施します。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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