際限なく蓄財するだけで、資産管理に無関心な高齢親
これから相続を迎える高齢者層、70代、80代、90代の世代には、戦争を体験された方・戦後の物資のない時代を知っている方が多く、モノを大切にする価値観をお持ちです。コツコツと蓄財して産を残すことに価値を見出す一方、自身は贅沢をすることなく「子どもや孫のために財産を残す」のを何より重視されているのです。
それだけに「財産は残すものであり、自分が使うものではない」という価値観のもと、財産を動かすことに抵抗があるため、なかなか相続対策が立てられず、子世代がヤキモキするケースによく遭遇します。
堅実な親が子どものために築いてくれた財産も、親世代に任せっぱなしにしてしまうと、相続発生時に大きく減ってしまうリスクがあります。これに気がついた子ども世代は、親任せにすることなく、自ら専門家と相談して対策の方法を選択し、親やきょうだいに説明して理解を促しつつ対策を実行する、といった方も増えてきているのです。
都内の自宅でひとり暮らしの母、住み替え提案は拒否
【事例1】立地のいい自宅を持つ母親。子どもの自宅を処分し、小規模宅地の特例を活用
60代の近藤さんは、3人きょうだいの長男です。父親は10年近く前に他界して以降、80代の母親が都心の戸建て住宅で1人暮らしをしてきましたが、数ヵ月前に自宅で転倒し骨折。現在はリハビリ病院に入院中です。近くに住む長女が母親のサポートをしてくれています。
母親が高齢になってきたことや、相続税の改正があったことを受け、いよいよ母親の生前対策をしておかなければと考えた近藤さんは、筆者の事務所へ相談に来られました。
長男の立場にある近藤さんですが、結婚後、さいたま市にある配偶者の実家そばに自宅を購入したため、自分の両親とは同居しませんでした。長女は横浜市の資産家に嫁ぎ、配偶者の両親が建ててくれた自宅に暮らしています。次女はアメリカの大学に留学しましたが、卒業後は現地で就職し、同僚のアメリカ人と結婚。日本にはほとんど帰ってきません。
◆都心の自宅の評価が高い!
母親の財産内容は、自宅の土地(340m2)が2億4000円、建物1000万円、隣接する賃貸マンションの土地1億円、建物2500万円、預金2000万円、有価証券800万円、合計3億9300万円となりました。相続税の計算をすると8700万円と算出されました。
子の相続における課題は、下記の3点が挙げられます。
①自宅の立地がよく、土地の評価が高いため、相続税は8700万円と高額
②現在の金融資産は2800万円しかなく、納税できる現金が足りない
③自宅と賃貸マンションの建物はともに築30年以上で維持費がかかる
◆節税のために子どもが住み替えを決断
筆者が節税対策の方法をいくつか提案したところ、近藤さんは、80代の母親が自宅を売却して住み替えたり、賃貸マンションを建て替えたりするのは、あまりにもハードルが高いと判断。
そこで、母親の負担がなく節税効果が得られる方法として提案したのが、近藤さん夫婦が母親の自宅に同居し、小規模宅地等の特例を適用する方法です。そうすれば、1億8635万円に評価が下がり、相続税は2660万円まで下がりますので、相続税は払える範囲に収まります。
自宅を残したままの同居では特例が使えないため、近藤さんは自宅を売却し、家賃が入る区分マンションを購入しました。母親との同居は、母親自身からも、妹たちからも、願ってもないことだとして感謝され、同意が得られました。
これにより、節税もできるうえに家賃収入まで入るようになります。近藤さん夫婦のお子さんはすでに独立しているため、今回の住み替えを伴う節税対策へのハードルも、ぐっと下がったといえるでしょう。
同居して小規模宅地等の特例を適用(敷地面積が330m2であるため、80%減)でき料にしておきます。子どもには自宅を残さず、売却して区分マンションを購入します(賃貸してもよい)。
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