多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「発展途上国の貧困」が密接につながっていることはあまり知られていません。そこで、池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)より、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと貧困について解説します。

「生産者の取り分1%」の本当の意味

あなたが一杯330円のコーヒーを飲むとき、その何%が生産者に届くと思いますか。1杯のコーヒーを淹れるために、コーヒー豆10グラムを使うとして計算してみましょう。

 

このコーヒー豆は焙煎したものなので、生豆に換算すると12.5グラムになります。これを2020年5月8日時点での国際価格(1ポンド=100セント)で換算すると約3.25円となります。つまり、一杯330円のコーヒーの約1%になります。

 

国際価格は輸出価格であり、そのすべてが生産者の取り分になるわけではありません。生産者から輸出までの段階で、精選や輸送のコストなどがかかっているため、生産者の取り分は1%よりもさらに小さくなってしまいます。

 

1%という数字を聞くと、その少なさにきっと驚かれることでしょう。しかし、だからと言って、この数字から生産者は搾取されているとか、貧しいとか言えるわけではありません。この数字をことさらに強調し、コーヒー産業は生産者を搾取するひどい産業だというイメージを印象付けようとする映画もありましたが、この解釈は正しくありません。

 

1杯のコーヒーの値段のうち、生産者の取り分が全体のたった1%だとしても、それだけでコーヒー農家が貧しいと決めつけることはできません。なぜならコーヒー農家が生産するコーヒー豆の総量が、最終的に何杯分のコーヒーになるのかという大事なポイントが一切考慮されていないからです。

 

もしそのコーヒー生産者が年間1トンのコーヒーの生豆を生産しているとすれば、1杯分12.5グラムとしてコーヒー8万杯分(100万グラム÷12.5グラム)になり、一杯当たり3円の取り分だとしても、収入は24万円になります。

 

もし2トンとれるなら収入は倍の48万円になります。開発途上国の物価水準は低く、世界の貧困線は一人一日約2ドルに設定されています。

 

年収にすると7万円程度です。国によって貧困線は異なりますが、24万円や48万円という額が、日本で考えるほど少ないとは言えません。妥当な収入がいくらかという問題はここでは置いておくとして、まずここで知ってほしいのは、「コーヒー1杯のうちの取り分が1%」という数字から生産者が貧困かどうかを推論することはできないということです。

 

では、1%という数字の大きさの意味について考えてみましょう。日本で業務用(ホテル・レストラン用)として売られている安いコーヒー豆(粉)は1キログラム当たり1000円もしません。コーヒー1杯につき10グラムで計算すると、一杯当たりのコストは約10円で、コーヒーの値段が330円だとすると、コーヒー豆のコストはちょうど3%です。

 

それでも上述の1%より大きくなるのは、日本国内での焙煎費や輸送費などが含まれているためです。だから1%という数字はそれほど間違った数字ではありません。

 

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コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

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