コーヒーを楽しむ日本人は知らない…「生産地」の恐ろしい事態

多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「発展途上国の貧困」が密接につながっていることはあまり知られていません。そこで、池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)より、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと貧困について解説します。

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「コーヒー危機」がもたらした飢餓

飢餓の「飢」も「餓」も「うえる」と読みます。つまり「飢餓」とは読んで字のごとく、食べるものがなく、空腹を感じている状態を指しますが、問題なのはその状態がずっと続いて栄養状態が悪化し、健康にまで悪影響を及ぼすことです。

 

人々が飢餓に陥る原因は様々です。例えば、干ばつなど異常気象や自然災害で食料生産が急激に減少することで起こることもありますし、あるいは、戦争やテロリズムのような人為的なものが原因になっているケースもあります。

 

このような場合は、飢餓が地域的な現象として起こっていることが多く、それ以外の地域では食料は十分に存在しているため、支援によって食料が提供されれば、比較的短期間で収まることもあります。逆に飢餓の状態が長続きしてしまうことがあれば、それは政府や国際社会の対応が不十分であるせいだと考えてよいでしょう。

 

また、どこかの国全体が飢饉に陥ってしまうようなときには、国連世界食糧計画(WFP)や国際協力によって食料支援が行われます。戦争によって難民になってしまった人たちには、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国際的に活動するNGOによる支援も行われています。

 

日本のような先進国の場合は、飢餓が個人のレベルで起こるケースが大半です。生活保護も受けられず、何の支援も受けられなかった人がひっそりと餓死していたという痛ましいニュースが報道されることがありますが、このような個人レベルの飢餓に対しては、社会がもっと細やかな対策を講じる必要があります。

 

さて、コーヒーは世界中でおよそ2,500万世帯の農家が従事すると言われる巨大産業であるがゆえに、コーヒー価格が大幅に下落すると、世界中のいたるところで飢餓が起こることがあります。

 

特にコーヒーが主要農作物となる中南米はその影響が大きく、実際、2001年に起きた「コーヒー危機」の際には、中南米の多くのコーヒー生産者の暮らしが立ちいかなくなり、多くの人々が慢性的な飢餓に陥りました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

栄養失調に陥った挙句、生きるために農園を捨てて都市を目指し移動する姿も多く見られたのです。

 

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東京大学東洋文化研究所 教授
日本サステイナブルコーヒー協会 理事

京都大学経済学部卒業後、アジア経済研究所入所。1987年から1989年にかけて海外派遣員としてタイのチュラロンコン大学社会科学研究所に赴任。1990年、京都大学東南アジア研究センター助教授。1993年から1994年にかけて東南アジア研究センター・バンコク連絡事務所駐在。1993年、京都大学博士(経済学)取得。1998年、東京大学東洋文化研究所助教授に就任し、2002年より現職。
2010年から2016年にかけてASNET(日本・アジアに関する教育研究ネットワーク)副ネットワーク長も務める。
主な著書は『連帯経済とソーシャル・ビジネス―貧困削減、富の再分配のためのケイパビリティ・アプローチ』(池本幸生 松井範惇編/明石書店)。翻訳書は『正義のアイデア』(アマルティア・セン/明石書店)、『格差社会の衝撃:不健康な格差社会を健康にする法』(リチャード・ウィルキンソン/書籍工房早山)、『女性と人間開発 潜在能力アプローチ』(マーサ・ヌスバウム)・『不平等再検討: 潜在能力と自由』(アマルティア・セン/ともに岩波書店)。

著者紹介

株式会社ミカフェート 代表取締役社長
日本サステイナブルコーヒー協会 理事長
タイ王室メイファールアン財団 コーヒーアドバイザー
国際協力機構(JICA)コーヒー分野にかかる課題別支援委員会 委員長

静岡市の焙煎卸業の家に生まれる。静岡聖光学院高等学校卒業後、エルサルバドル共和国国立コーヒー研究所に留学。大手コーヒー会社に就職。ジャマイカ、ハワイ、スマトラで農園開発に携わり、マダガスカルでは絶滅種マスカロコフェアの発見と種の保全、レユニオン島では絶滅種ブルボンポワントゥの発見と島のコーヒー産業を復活させた。
2007年に同社を退職後、日本サステイナブルコーヒー協会を設立し、2008年に株式会社ミカフェート設立。2017年、長年にわたるコーヒーを通じた日本とエルサルバドルとの友好親善の促進が認められ外務大臣表彰を受け、2019年には『ニューズウィーク』の「世界が尊敬する日本人100」に選ばれる。同年キューバで19世紀のティピカを発見した。
主な著書は『コーヒーハンター幻のブルボン・ポワントゥの復活』(平凡社)、『私はコーヒーで世界を変えることにした。』『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』(ともにポプラ社)、『Coffee Hunting Note 100カップログ』(世界文化社)。『僕はコーヒーがのめない(ビッグコミックス)』(小学館)の監修も務めた。

著者紹介

ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー

慶應義塾大学卒業、ケンブリッジ大学修士号サステイナビリティ・リーダーシップ取得。外資系企業勤務後、2001年より国際NGOコンサベーション・インターナショナルに勤務。
気候変動プログラム・ディレクターとして、国連気候変動枠組条約の森林保全に関わるアジェンダへのインプットや日本政府の資金援助に基づく開発途上国の森林保全調査案件を率いたほか、現地プログラムとの連携によるプロジェクト実施に取り組む。
日本と開発途上国のパートナーシップによる持続可能な社会の実現をライフワークとする。2015年より、株式会社ミカフェートのサステイナブル・マネージメント・アドバイザー。主に個々のコーヒー生産農家がサステイナビリティを向上させるためのニーズを調査し、その支援の立ち上げに取り組んでいる。

著者紹介

連載コーヒーで学ぶSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

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