日本も他人事じゃない…コーヒー農場での「外国人労働者」問題

多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「発展途上国の貧困」が密接につながっていることはあまり知られていません。そこで、池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)より、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと貧困について解説します。

コーヒーから読み解く、「人類の可能性」

平均所得、健康、教育の三つの指標から、国の発展状況を読み解くためにつくられた指標に「人間開発指数」(Human Development Index╱HDI)というものがあります。

 

言い換えるなら、「発展」を単なる経済成長ではなく、「人々の暮らしが良くなること」と捉えようとするものであり、国連開発計画(UNDP)によってその指数とランキングが1990年から公表されています。

 

「経済開発」が経済に焦点を合わせるのに対して、「人間開発」は人の暮らしに焦点を合わせており、この考え方は、1998年のノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センのケイパビリティ・アプローチに基づいています。

 

ケイパビリティ・アプローチとは人が「何をできるか」という観点から人々の暮らしの良さを捉えようとする考え方です。

 

開発とは「人々の選択肢が拡大すること」と言われることがありますが、「人間開発指数」の観点から考えると「経済的に豊かな暮らしが送れる」だけでなく、「高い教育を受けることができる」「長生きをすることができる」などの様々な選択肢を獲得することだと言うことができます。

 

言い換えれば、人々が様々な生き方を選択する「自由」を獲得することでそれぞれの可能性を広げていく過程こそが開発なのであり、「人間開発指数」の提唱者であるセンの著書「Development as Freedom(自由としての開発)」のタイトルはまさにそのことを示しているのです。

 

SDGsの17のゴールも、「十分な栄養を摂ることができる」「健康的に生きることができる」「教育を受けることができる」「衛生的な水を利用できる」「働きがいのある仕事ができる」「平和に生きることができる」「社会の活動に参加できる」「人々と連帯することができる」「豊かな自然とともに生きることができる」など、人々の生き方の選択肢と深く関わっています。

 

つまり、SDGsの達成は、地球に住むすべての人たちの生き方の可能性を広げることにもつながるのだと言えるでしょう。

 

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東京大学東洋文化研究所 教授
日本サステイナブルコーヒー協会 理事

京都大学経済学部卒業後、アジア経済研究所入所。1987年から1989年にかけて海外派遣員としてタイのチュラロンコン大学社会科学研究所に赴任。1990年、京都大学東南アジア研究センター助教授。1993年から1994年にかけて東南アジア研究センター・バンコク連絡事務所駐在。1993年、京都大学博士(経済学)取得。1998年、東京大学東洋文化研究所助教授に就任し、2002年より現職。
2010年から2016年にかけてASNET(日本・アジアに関する教育研究ネットワーク)副ネットワーク長も務める。
主な著書は『連帯経済とソーシャル・ビジネス―貧困削減、富の再分配のためのケイパビリティ・アプローチ』(池本幸生 松井範惇編/明石書店)。翻訳書は『正義のアイデア』(アマルティア・セン/明石書店)、『格差社会の衝撃:不健康な格差社会を健康にする法』(リチャード・ウィルキンソン/書籍工房早山)、『女性と人間開発 潜在能力アプローチ』(マーサ・ヌスバウム)・『不平等再検討: 潜在能力と自由』(アマルティア・セン/ともに岩波書店)。

著者紹介

株式会社ミカフェート 代表取締役社長
日本サステイナブルコーヒー協会 理事長
タイ王室メイファールアン財団 コーヒーアドバイザー
国際協力機構(JICA)コーヒー分野にかかる課題別支援委員会 委員長

静岡市の焙煎卸業の家に生まれる。静岡聖光学院高等学校卒業後、エルサルバドル共和国国立コーヒー研究所に留学。大手コーヒー会社に就職。ジャマイカ、ハワイ、スマトラで農園開発に携わり、マダガスカルでは絶滅種マスカロコフェアの発見と種の保全、レユニオン島では絶滅種ブルボンポワントゥの発見と島のコーヒー産業を復活させた。
2007年に同社を退職後、日本サステイナブルコーヒー協会を設立し、2008年に株式会社ミカフェート設立。2017年、長年にわたるコーヒーを通じた日本とエルサルバドルとの友好親善の促進が認められ外務大臣表彰を受け、2019年には『ニューズウィーク』の「世界が尊敬する日本人100」に選ばれる。同年キューバで19世紀のティピカを発見した。
主な著書は『コーヒーハンター幻のブルボン・ポワントゥの復活』(平凡社)、『私はコーヒーで世界を変えることにした。』『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』(ともにポプラ社)、『Coffee Hunting Note 100カップログ』(世界文化社)。『僕はコーヒーがのめない(ビッグコミックス)』(小学館)の監修も務めた。

著者紹介

ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー

慶應義塾大学卒業、ケンブリッジ大学修士号サステイナビリティ・リーダーシップ取得。外資系企業勤務後、2001年より国際NGOコンサベーション・インターナショナルに勤務。
気候変動プログラム・ディレクターとして、国連気候変動枠組条約の森林保全に関わるアジェンダへのインプットや日本政府の資金援助に基づく開発途上国の森林保全調査案件を率いたほか、現地プログラムとの連携によるプロジェクト実施に取り組む。
日本と開発途上国のパートナーシップによる持続可能な社会の実現をライフワークとする。2015年より、株式会社ミカフェートのサステイナブル・マネージメント・アドバイザー。主に個々のコーヒー生産農家がサステイナビリティを向上させるためのニーズを調査し、その支援の立ち上げに取り組んでいる。

著者紹介

連載コーヒーで学ぶSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

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