「安いコーヒーを楽しむ日本人」が知らない環境破壊の恐い実態

多くの日本人が何気なく飲んでいる「コーヒー」と「環境破壊」が密接につながっていることはあまり知られていません。池本幸生氏、José. 川島良彰氏、山下加夏氏の連著『コーヒーで読み解くSDGs』(ポプラ社)のなかで、身近な飲み物であるコーヒーを切り口として、コーヒーと環境について解説します。

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普段飲んでいる「コーヒー」が環境を破壊する?

コーヒーの生産者、つまり、つくる側が環境のためにできることはどのようなことがあるのでしょうか。実は、コーヒー栽培は、環境破壊の元凶であるかのように批判された時代もありました。その理由の一つは、廃棄物の多さです。

 

コーヒーは、加工が前提の農作物であり、その過程で大量の廃棄物や排水が出てしまうことは避けられません。収穫後の精選と呼ばれる種(コーヒー豆)を取り出す過程の中で、コーヒーチェリーから取り除かれた果皮は、ジャムや「カスカラティー」の茶葉などに加工されることもありますが、それはほんの一部にすぎず、そのほとんどは廃棄されます。

 

つまり、精選が終わる頃には、果皮の廃棄物が大量に生じるのです。この大量に出る果皮の廃棄物を有効利用すべく、世界各国で生産者たちが積極的に再利用に取り組んでいます。

 

例えば、果皮を分解し堆肥化して畑に撒いたり、栄養価の高い果皮を食べさせたミミズの糞を畑に撒くなど、肥料として再利用するほか、果皮に石灰を撒いて中和させたあと天日で乾燥させ、それをコーヒーの機械乾燥の燃料として使用することも盛んに行われるようになりました。

 

果皮と同様に破棄されるパーチメントも、そのまま燃料として使われています。さらに脱殻後のコーヒーの殻を乾燥させて粉状に加工すれば、小麦粉の代替品としてパンやケーキの材料として使うこともできます。

 

「コーヒーフラワー」と呼ばれるこの粉は、果肉のほんのり甘い風味があり、ポリフェノール、ビタミンA、繊維質、タンパク質、カリウム、鉄分を多く含み、アメリカなどではスーパーフードとも呼ばれ、健康志向の高い人たちが注目する商品にもなっています。

 

また、コーヒーの果実は、青い未熟なものよりも真っ赤な完熟した果実のほうが価値は高く、それがコーヒーの品質を高めるのですが、完熟した果実だけを摘み取るという作業は時間がかかるため、急いで収穫しようとするとどうしても未熟な豆まで収穫してしまいます。

 

生産者からの買い取り価格が品質にかかわらず一定である場合は、生産者には完熟した果実だけを収穫しようとするインセンティブを欠くことになり、それは結果的にコーヒーにより多くの未成熟豆が含まれることにつながります。

 

コーヒー会社や消費者が安いコーヒーを追い求めることは、生産者側のつくる意識を低下させ、長い目で見ればコーヒー産業にも良いことはないのです。コモディティコーヒーでもスペシャルティのように品質が重視されるようになれば、より良い価格で売れるというインセンティブによって、丁寧な収穫が行われ、それが結果的に未成熟豆や欠点豆を最小限に抑えることにも繋がっています。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

つまり、完熟まで収穫を待つことで、より多くのコーヒーが美味しくなって世界に流通することにもつながるのです。コーヒーは味や香りを楽しむ嗜好品です。安さでなく品質を評価することが、コーヒー農家の生活向上に貢献するだけでなく、コーヒー産業全体を底上げしていくという事実を、もっと多くの人に気づいて欲しいところです。

 

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東京大学東洋文化研究所 教授
日本サステイナブルコーヒー協会 理事

京都大学経済学部卒業後、アジア経済研究所入所。1987年から1989年にかけて海外派遣員としてタイのチュラロンコン大学社会科学研究所に赴任。1990年、京都大学東南アジア研究センター助教授。1993年から1994年にかけて東南アジア研究センター・バンコク連絡事務所駐在。1993年、京都大学博士(経済学)取得。1998年、東京大学東洋文化研究所助教授に就任し、2002年より現職。
2010年から2016年にかけてASNET(日本・アジアに関する教育研究ネットワーク)副ネットワーク長も務める。
主な著書は『連帯経済とソーシャル・ビジネス―貧困削減、富の再分配のためのケイパビリティ・アプローチ』(池本幸生 松井範惇編/明石書店)。翻訳書は『正義のアイデア』(アマルティア・セン/明石書店)、『格差社会の衝撃:不健康な格差社会を健康にする法』(リチャード・ウィルキンソン/書籍工房早山)、『女性と人間開発 潜在能力アプローチ』(マーサ・ヌスバウム)・『不平等再検討: 潜在能力と自由』(アマルティア・セン/ともに岩波書店)。

著者紹介

株式会社ミカフェート 代表取締役社長
日本サステイナブルコーヒー協会 理事長
タイ王室メイファールアン財団 コーヒーアドバイザー
国際協力機構(JICA)コーヒー分野にかかる課題別支援委員会 委員長

静岡市の焙煎卸業の家に生まれる。静岡聖光学院高等学校卒業後、エルサルバドル共和国国立コーヒー研究所に留学。大手コーヒー会社に就職。ジャマイカ、ハワイ、スマトラで農園開発に携わり、マダガスカルでは絶滅種マスカロコフェアの発見と種の保全、レユニオン島では絶滅種ブルボンポワントゥの発見と島のコーヒー産業を復活させた。
2007年に同社を退職後、日本サステイナブルコーヒー協会を設立し、2008年に株式会社ミカフェート設立。2017年、長年にわたるコーヒーを通じた日本とエルサルバドルとの友好親善の促進が認められ外務大臣表彰を受け、2019年には『ニューズウィーク』の「世界が尊敬する日本人100」に選ばれる。同年キューバで19世紀のティピカを発見した。
主な著書は『コーヒーハンター幻のブルボン・ポワントゥの復活』(平凡社)、『私はコーヒーで世界を変えることにした。』『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』(ともにポプラ社)、『Coffee Hunting Note 100カップログ』(世界文化社)。『僕はコーヒーがのめない(ビッグコミックス)』(小学館)の監修も務めた。

著者紹介

ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー

慶應義塾大学卒業、ケンブリッジ大学修士号サステイナビリティ・リーダーシップ取得。外資系企業勤務後、2001年より国際NGOコンサベーション・インターナショナルに勤務。
気候変動プログラム・ディレクターとして、国連気候変動枠組条約の森林保全に関わるアジェンダへのインプットや日本政府の資金援助に基づく開発途上国の森林保全調査案件を率いたほか、現地プログラムとの連携によるプロジェクト実施に取り組む。
日本と開発途上国のパートナーシップによる持続可能な社会の実現をライフワークとする。2015年より、株式会社ミカフェートのサステイナブル・マネージメント・アドバイザー。主に個々のコーヒー生産農家がサステイナビリティを向上させるためのニーズを調査し、その支援の立ち上げに取り組んでいる。

著者紹介

連載コーヒーで学ぶSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

コーヒーで読み解くSDGs

Jose.川島 良彰、池本 幸生、山下 加夏

ポプラ社

あたなの知らない、コーヒーとSDGsの世界。 コーヒー、経済、開発援助の専門家3名がいざなうコーヒーで未来を変える旅。 コーヒーには、SDGsのアイデアがあふれている! #コーヒー危機と世界経済 #コーヒーがもたら…

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