子世代に迷惑をかけたくないという思いから、生活を切り詰め、納税のための現金を積み上げている親世代は少なくありません。しかし、相続税の節税という観点から考えると、その方法ではメリットが得にくく、注意が必要です。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

現金でマンションを購入し、節税に成功したケース

相談者の田村さんは80代で、現在の資産の相続税を懸念して筆者の事務所を訪れました。数年前のこと、当時70代だった妻は、体調を崩して車いす生活になったのをきっかけに介護施設に入所したそうです。その後しばらく施設で生活しましたが、残念ながら他界しました。それなりの施設ではありましたが、妻には介護保険が出たため、入所中も田村さんが財産を持ち出す必要はなかったそうです。

 

 

田村さんは妻が施設に入所して以降、家族で長年暮らしてきた自宅でひとりっ子の長男と2人で暮らしてきました。長男は40代独身ですが、海外出張なども多くある、多忙な仕事に就いています。田村さんは、そんな息子に負担をかけてはいけないと考え、妻を見送ってしばらくのち、高齢者用の賃貸住宅を探して転居することにしました。

 

食事等の身の回りのサポートをしてもらいながら、普段はボランティア等に動き回ることができるなど、想像事情に快適な生活を送っています。また、賃貸住宅にかかる費用と食費やちょっとしたお小遣い程度で、20万円程度に納まり、年金だけで十分賄えています。

 

このまま放置していると、自分亡きあとの相続税がかなりの金額になってしまうのではと危惧したとのことでした。

 

できるだけ子どもが維持しやすい財産にして残したいのと希望があったため、筆者は区分マンションの購入を勧めしました。

 

妻や自分の経験上、老人ホームでの生活も、そこまで高額なお金は必要がないと判明したことから、早い段階で有効な節税対策に踏み切ることで、財産の評価を下げることができました。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

本記事は、株式会社夢相続が運営80代するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録