善意から起きた「食物アレルギー」事例
9月10日午後に患児Aが入院予定だった。患児Aは3歳男児で、9月11日に鼠径ヘルニアの手術をする予定だった。
10時5分頃、日勤業務の看護師B(15年目、小児外科2年目)は、患児Aにおやつが来ないことに気がついた。おやつは昼食と同時に配るので、入院当日はオーダーできなかったからである。この病棟では、他の患児がおやつを食べているときに一緒に食べられるようにとの配慮で、紙ベース(予定入院リスト)のオーダーをしていた。その予定入院リストには、患者ID・氏名・禁止食品の欄があった。
看護師Bは予定入院リストに患児AのIDと名前を書いて栄養部にFAXを送った。受け取った栄養士C(5年目)は、禁止食品の記載がなかったので、食札を手書きして、通常のおやつメニューであるマッシュポテトとオレンジジュースを上膳した。
13時頃、患児Aが入院した。14時50分頃、病棟におやつが届いたので、看護師Bが母親におやつのマッシュポテトを食べるかと確認したところ、食べるとの返事であった。看護師Bはおやつを母親に渡した。
15時頃、患児Aがおやつを食べた後、嘔吐と全身発疹が出現したので、看護師Bがカルテを見てみると、アレルギーがあった。栄養部にマッシュポテトの材料を問い合わせて、牛乳・バターが入っていたことがわかった。栄養士Cもカルテを確認していないことに気付いた。医師がアレルギーと判断して抗ヒスタミン剤が投与され症状が改善した。
患児Aは牛乳・乳製品アレルギーがあり、以前の入院歴にはアレルギー対応となっていた。
インスリンと延食、確認不足による「低血糖症状」事例
11月14日昼間、医師Aは看護師Bに、患者Cの翌日の腹部超音波検査の指示を出した。検査指示をコンピュータへ入力はしたが、インスリンの指示は出していなかった。指示を受けた看護師Bは、インスリンの指示について確認しなかった。
11月15日検査当日、患者Cは、腹部超音波検査のため、昼食が延食となっていた。患者Cのオーバーテーブルには「延食」と書かれた札が置かれていた。看護師D(患者の受け持ち)と看護師Eは、夜勤者からの申し送り後、(患者Cの)情報交換を5分ほど行った際に、昼の血糖値チェックのことしか話していなかった。
看護師Dは、夜勤者からの申し送りとカーデックス(患者に関する情報や治療内容、実際に行われた処置、看護計画などを、患者ごとに紙にまとめ専用ファイルにはさんだもの)で、患者Cが昼延食になっていることを知っていたが、看護師Eはそのことを知らなかった。
11時45分、看護師Dは、看護師Eに患者Cの血糖値チェックを依頼し、お昼休憩に入った。依頼を受けた看護師Eは、自分の受け持ち患者にも昼食前血糖値チェックをする患者がいたので、2人の患者の血糖値チェックを行った。自分の受け持ち患者の血糖値は208、患者Cの血糖値は189だった。
看護師F(他の看護グループ)と指示簿を確認、血糖値の結果に従い、それぞれのカーデックスを見て、インスリンを準備した(インスリンの指示欄しか見ていない)。そして、看護師Eはいつものようにインスリンを投与した。投与のとき、患者Cから昼延食や検査のことについて何も言われなかった。
13時頃、昼食を摂取しなかった患者Cは手足の震え、冷や汗、気分不快を訴えた。看護師Eが血糖値を測定したところ、30以下に下がっていた。報告を受けた看護師G(リーダー看護師)は昼食を摂取していなかったことに気づいた。
すぐに、医師Hに状況を報告し、その指示で、看護師Gが50%グルコースを静注したところ、患者Cの症状は改善し、床上安静となった。