(※写真はイメージです/PIXTA)

組織のなかで、人が判断ミスをしたり事故を起こしたりする最大の要因は、その組織の「安全文化」の欠落です。環境は個人の行動にまで影響を及ぼします。しかし、安全が大切とわかってはいても、「安全文化」として醸成させるのは難しいもの。事故を発生させない組織のつくり方を見ていきましょう。※本記事は、河野龍太郎氏の著書「医療現場のヒューマンエラー対策ブック」(日本能率協会マネジメントセンター)より抜粋・再編集したものです。

スピードやコスト重視の組織の「雰囲気」が事故を招く

人間の行動に影響する要因にはさまざまなものが考えられます。人間の行動モデルでは、B=f(P、E)※1で説明できます。このときのEを考えてみましょう。

 

※1 Bはその行動、Pは人の要因、Eは環境の要因を示す。fは関数という意味で、ここでは「“関係する”ということを示している記号」を表す。「人間の行動は、人の要因と環境の要因の関係によって決められる」という意味。

 

たとえば、環境の中に自分が苦手とする怖い先輩がいたらどうでしょうか。この先輩の存在そのものが判断や行動に影響を与えると考えられます。

 

安全を軽視するようになると、事故は起こりやすくなる。そしてあるとき、大きな事故が発生するという。(※写真はイメージです/PIXTA)
安全を軽視するようになると、事故は起こりやすくなる。そしてあるとき、大きな事故が発生するという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

環境は物理的空間だけではなく、心理的空間が直接判断や行動に影響を与えます。この環境には組織風土も含まれます。とにかく仕事をこなすことを最優先にする風土があれば、そこで働く人は仕事をたくさん早く処理することを最優先に考えるようになります。

 

また、コストダウンを口うるさく言う社長がいれば、コストダウンが最優先になります。そうなると、安全に対する優先順位が低くなるのは当然です。

 

そのうちその組織全体が、仕事を早く処理することやコスト削減を最優先にして、安全のためのひと手間を面倒だと考えてしまいます。そして誰もそれに疑問を持たないようになることが考えられるのです。「誰もそれに疑問を持たなくなってしまう」。「それが当たり前になってしまう」これが恐ろしいのです。

 

このように、組織が持つ共通した価値観(何が重要か)と信念(それが正しいと堅く信じ込むこと)は組識の構造、制御システムに作用します。行動規範(社会集団におけるルール・慣習)をつくり出すものを組織文化といいます。

 

この雰囲気が安全を軽視するようになると、事故は起こりやすくなります。そしてあるとき、大きな事故が発生するのです。

 

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