コロナ禍でも「物流施設の需要」を牽引した2つの要因
2020年の大型マルチテナント型物流施設(LMT)の新規需要は、三大都市圏の合計で63万坪程度になりそうだ。新規供給が集中した2018年、2019年には及ばないが、過去3番目の規模である。コロナ禍にあっても堅調な物流施設需要が続き、首都圏では空室率が過去最低水準をキープした。
需要の大きな源泉の一つはECである。
日本のEC市場は2008年以降、年平均して11%超で拡大してきた。新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大下では、感染予防策のための外出自粛による巣ごもり需要で、EC市場の拡大ペースは加速したとみられる(FIGURE1)。
ECプラットフォーマーは取扱量のさらなる拡大に備えた全国配送網の拡充のため、各地で精力的に物流施設の確保を急いでいる。巣ごもり需要は、物流施設を利用する主流の商品群である一般消費財のニーズを高めたのみならず、その保管在庫も増やす方向に働いた。
このことは、世の中に欠かせないインフラとしての物流施設のニーズを、一段と強めることとなった。
もう一つの需要牽引役は、物流の自動化・IT化である。
荷物量が増大するなか、物流倉庫内の作業や輸送の効率を高めるため、物流会社各社は倉庫面積の拡張と同時に先端テクノロジーを取り入れようとしている。
COVID-19の影響で業績が厳しい産業では、一時的に投資を抑える企業もあろう。しかしながら、構造的な人手不足の問題は将来的な利益を圧迫するとの考え方から、競争力を維持するには改革のスピードを緩められない側面もある。
また、輸送の分野でも配車や積載量の効率を高めるためにITが利用されている。大都市間の輸送の距離を埋めるように、地方都市周辺や交通の要衝となる立地で物流ニーズが起きている。
上記のような堅調な需要を背景に、デベロッパーや投資家は他のアセット以上に物流施設への投資を重視する傾向が強まっており、高水準の新規供給が計画されている(FIGURE2)。
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