日本人のほとんどの人は「一生住み続ける」ことを前提に家やマンションを買っている。そのために何千万円というお金を金融機関から借りている。しかし、じつはほとんどの分譲マンションは、廃墟化への時限爆弾を抱えているという。マンションの廃墟化を防ぐ手立ては何か。本連載は榊淳司著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

リゾートマンションは有料粗大ゴミとなったか

とうとう、リゾートマンションは有料粗大ゴミ同然の存在になり下がったのだ。それも、かなり高額な引き取り料を要求される難儀なシロモノだ。

 

榊淳司著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)
榊淳司著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)

しかし、このビジネスには多分に無理があるように思える。その会社は、引き取って自社関連法人の所有にしたマンションをどうするのか。たぶん、転売はできない。元の所有者が何年もかけて売れなかった物件だ。こういった取引でその所有者になってしまったら、管理費や修繕積立金、湯沢町への固定資産税を払わなければいけないではないか。

 

引き取られた物件の末路は?

 

この引き取りビジネスは、どういうスキームのもとに成立しているのだろう。私の勝手な推測を述べよう。

 

その会社は、関連法人で引き取ったリゾートマンションを放置してしまうのだろう。当然、管理費や修繕積立金、湯沢町への固定資産税は支払わない。支払うと、このビジネスモデルでは利益が出なくなるからだ。

 

つまり、この会社は報酬を得て区分所有権を自社関連の法人に移転するが、その後に生じる所有者としての義務は一切果たさないのだ。そして、3年分の所有経費相当の報酬は全額を利益にしてしまう。

 

最初からその意図でやったとしたら、なんらかの違法行為になる。しかし、「関連法人を作って運用に努めたのですが、どうにもうまく行かなくて」と言い訳をしておけば摘発はしにくい。おそらく、そういうスキームだろう。

 

それで、管理費や修繕積立金、固定資産税を払ってもらえない管理組合や湯沢町が困ることになる。

 

結局、管理組合が競売にかけるか、湯沢町が公売に付すしか手はなくなる。しかし、そこで落としてくれる善良な一般人がそう易々と現れるとも思えない。

 

リゾートマンションの命運を左右するものとは

 

このような悲惨な状態であり、なおかつ悪質な業者の魔の手に晒されているにもかかわらず、湯沢町にあるリゾートマンションの管理組合は公平に見てよくやっていると思う。

 

管理費滞納などで競売にかけた場合、管理組合で落札するケースが多くなった。一万円で競売に出された物件を、20万円で落札する場合もあるという。普通の手段では住宅を購入することも賃貸することもできない反社会的な人々などが競落するのを防ぐためである。

 

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すべてのマンションは廃墟になる

すべてのマンションは廃墟になる

榊 淳司

イースト新書

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