日本人のほとんどの人は「一生住み続ける」ことを前提に家やマンションを買っている。そのために何千万円というお金を金融機関から借りている。しかし、じつはほとんどの分譲マンションは、廃墟化への時限爆弾を抱えているという。マンションの廃墟化を防ぐ手立ては何か。本連載は榊淳司著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

リゾートマンションは廃墟化と闘っている

また、湯沢町では、マンションの理事長の連絡会議のような組織があり、行政や警察と協議する場が設けられたりしている。

 

かつて、湯沢町の管理組合の連帯組織は、宅建業の所管官庁である新潟県と粘り強い交渉をおこなったという。管理組合が自分たちのマンションの住戸を競落して第三者に転売する行為を、「宅建業法の規制外である」と認めさせた実績があるのだ。

 

あのバブル期とはいえ、リゾートマンションを購入した人はそれなりの富裕層である。その多くは親から資産を受け継いで富裕層になったのではなく、自らの才覚と能力でリゾートマンションを購入できる富を築いたのだと推測する。そんな彼らが、管理組合を運営する第一世代になっている。

 

そういうタイプの人々というのは、仕事もできるし頭脳も優秀だ。彼らが管理組合を運営しているから、湯沢町のリゾートマンションではいまだに秩序が保たれているのだと、私は考えている。

 

しかし、バブルの絶頂から約30年が経過した。40歳で購入した人は今、70歳になっているはずだ。あと10年で80歳。

 

第一世代が築いた管理組合運営のノウハウは、第二世代以降に引き継がれるだろうか。あるいは、第二世代と呼ばれる人々は存在するのか。

 

2015年の11月、湯沢エリアのあるタワーマンションで、修繕積立金の横領事件が発覚した。長年理事長を務めた人間が、約7億円以上の修繕積立金を着服していたことがわかったのだ。

 

そのマンション、今では発覚当時の1割程度まで流通価格が下落している。事件後、一時的に管理組合の修繕積立金会計はほぼゼロになったはず。そういうマンションの資産価値が、通常通りに評価される理由はない。

 

今後、湯沢エリアでこういう事件がまたいつ発生するかもわからない。また、築30年以上になる老朽マンションも多くなってきた。同時に、区分所有者も高齢化している。今後、管理費や修繕積立金の滞納は増えこそすれ減るとは思えない。

 

彼らがどこまで廃墟化に抗うのか、今後の展開に注目したい。

 

榊 淳司
住宅ジャーナリスト

 

 

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