「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

認知症を正しく理解すれば介護も楽になる

厚生労働省の研究班の調査では、2025年には認知症高齢者の数は約700万人。高齢者の5人に1人がなると推定されている。ということは、今後街のいたるところに認知星人が出没するわけだ。

 

この間もスーパーで、悲しい光景を目にした。認知症と思われるおばあさんのカゴの中には、いくつものだしの素が入っていた。レジの方が「×カードはお持ちですか? ポイントはお貯めしますか? レジ袋は必要ですか?」と、矢継ぎ早にマニュアルのとおりに話しかける。何度も何度も聞き返すおばあさん。だんだん混乱していくのがよくわかる。その後ろには明らかにイライラ光線を発射し、しまいには「早くしろよ」とつぶやくお姉さん。

 

見ていられなくなり、ちょっとお手伝いをした。帰りぎわにそのおばあさんは、「ありがとうね。最近よく、自分が何をしなくちゃいけないのかわからなくなるのよ」と言っていた。

 

私は、もっとたくさんの人に認知症を正しく理解してほしいと思っている。そして、認知症の人への接し方も知ってほしい。そうすることで、認知症の人は生活がしやすくなり安心するだろう。認知症を正しく理解していれば、介護をする人も少しは楽になるのではないだろうか。

 

これを書いている今、私は新型コロナウイルス拡大防止のため、家でおとなしくしている。そんな中、じーじは今日も元気にデイサービスに出かけていった。

 

在宅介護は介護保険のサービスなくしては成り立たない。まして、私のようにバツイチ独身の身では、日中や緊急時に預かってくれるところがなければ、おちおち仕事もしていられなくなり、生活がままならなくなる。自主休業しているデイサービスもあるようだが、父の利用しているデイサービスは、この非常時にもかかわらず「ぎりぎりまで頑張ります!」と言ってくれていてありがたい。

 

医療現場で戦ってくださっている医療従事者の方々、私たちの生活を支えてくださっている方々に感謝している。そして! 忘れてならないのが、介護現場のスタッフたちだ。利用者を新型コロナウイルスから守ってくれている「地球防衛軍」だ。この場を借りて全国の介護スタッフの皆さんにエールを送る。

 

あるセミナーで「可能性から生きる」ということを学んだ。また、ある勉強会では「運命は自ら招き、境遇は自ら造る」ということを学んだ。その時は「ふむふむ」くらいにしか思っていなかったが、どうやら「こうしたい!」と思っていると、ひょんなことから物事が動き出し、びっくりするようなことが本当に起こるということを実感している。

 

新型コロナウイルスでお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、一日も早く収束し、世界中の皆さんに心からの笑顔が戻りますように。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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黒川 玲子

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