「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

認知症父は日々進化し、攻撃を仕かけてくる

認知星人は日々進化する

 

じーじが認知星人だと思うようになってからは、わが家はだいぶ明るくなった。暗黒の深海から少し浮上して、水面からの光が差し込んできた感じだ。しかし、まだまだ海面には遠い。なぜなら、認知星人は日々進化し、新しい攻撃を仕かけてくるからだ。

 

認知症特有の症状に、見当識障がい(自らが置かれている時間、場所、状況などを正しく認識する機能に障がいが起こる)があるが、じーじも日にちがわからなくなることが多い。

 

そこで、ホワイトボードに○月×日と記入して部屋のあちこちに掲示したところ、見事に成功を収めた。しかし数日後、ホワイトボードの文字は消され、自分が「この日」だと思い込んでいる日付に書き換えたうえで「お前は間違っている」と攻撃を仕かけてくるようになった。

 

怒りん坊星人ダース・ベーダ―版は怒りん坊星人の最強版。スーハ―と不気味な音とともに忍び寄るという。写真提供=黒川玲子
怒りん坊星人ダース・ベーダ―版は怒りん坊星人の最強版。スーハ―と不気味な音とともに忍び寄るという。写真提供=黒川玲子

ならばと、毎朝、新聞の日付欄に赤いマル印をつけて確認してもらう作戦をとったところ、新聞の日付でその日を確認する習慣がついて作戦は成功。ところが!進化した認知星人は、新聞の日付欄にバツのマークを付け、自分が「この日」だと思い込んでいる日付に書き換えるという新たな作戦で攻撃を仕かけてくるといった塩梅だ。

 

反対に、何日間も攻撃を仕かけてくるので、どうやって解決しようかと必死の策を練り、いざ、実行したら本人はすっかり忘れて「お前は何を言っているんだ、変なやつだなあ」とかわされる日もある。

 

地球防衛軍の使命は、じーじに笑顔で毎日をすごしてもらうことだ。進化する認知星人に対応するためには、こちらも進化していかないと、また深海の暗黒の世界に逆もどりしてしまうのである。うかうかしている場合ではないのだ。

 

ストレスが溜まったら……とりあえずビール

 

地球防衛軍といえども、ニコニコばかりはしていられない。攻撃に耐えられずイラッとすると、認知星人は瞬時にその気配を察知し、ますますヒートアップし、100倍返し的な攻撃を仕かけてくる。100倍返しをくらわないためには、「はあ~?」と心の中で思っても「そうだね~」、「そうなんだね~」と言い続けなければならないときもあるが、これがかなりのストレスとなる。

 

ストレスが溜まると、気づかぬうちに要介護者を虐待しているケースがある。実際に家族から虐待を受けている高齢者をケアマネジャーが発見し、緊急避難的にホームに入居した人を見てきている。ストレスは溜めてはいけないのだ!

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