
「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。連載「見つめてひらめく介護のかたち『楽しむ介護』実践日誌」の著者の黒川玲子さんに在宅で介護を続けている認知症の父「じーじ」の近況報告をしてもらった。連載特別編をお届けします。
「俺のケアマネはデイにはいない。職務怠慢だ」
外ヅラ良夫は変わらない
台所で朝食の用意をしていると、なにやら殺気だった気配。「すり~すり~」というじーじのすり足で歩く音と「す~は~っ、す~は~っ」と荒い鼻息が聞こえる。恐る恐る振り向くと、認知星人ダース・ベイダー版に変身したじーじが立っているではないか。

私が振り向くや否や、「おい、ケアマネの契約書を持ってこい」とじーじ。明らかに戦闘態勢である。無視しようとも思ったが、認知症対応の5原則「無視しない」が頭をよぎったので、理由を聞いてみた。そうしたら、なんと、ケアマネを首にすると言うではないか。
だいたい、じーじはケアマネの仕事をよくわかっておらず(多くの要介護高齢者はそうだと思うが)、度々、ケアマネに勝手にいちゃもんをつけるので困っているのだ。
面倒くさいことにならなきゃいいなと、心の中で思いつつ、精一杯の優しい声で「何があったの?」と聞いてみた。
「俺のケアマネはデイにはいないんだ(常駐していないということらしい)。職務怠慢だ」
とじーじ。
「じーじのケアマネはデイにはいないよ~」
と答えると、怒りん坊星人のスイッチON! そして、怒りん坊星人の標準語(怒ると必ず敬語になる)で、
「あ~たは、本当に何もわかってらっしゃいませんね。普通ケアマネというのはデイにいて、私の面倒をみてくれるのがあたりまえなんですよ」
まあ、デイにもケアマネはいるが、それはじーじのケアマネじゃないんだけどと思いつつ聞いていると、ますますヒートアップ。しばらく色々文句を言っていた。
「ケアマネさんに何をしてほしいの?」と聞くと、「わたくしはですね、老眼鏡も買いにいけないんですよ。こんなことがあっていい訳がな~いじゃあ~りませんか」と一言。
へ? 老眼鏡?
「老眼鏡なら、私が一緒に買いに行ってあげるよ」と言うと、だんまりを決め込んで、仏頂面。
しか~し!
「ピンポ~ン」
デイのお迎えが来たとたん、私には見せたこともないような笑顔で、
「今日は天気がいいですなぁ~」
と鼻歌を歌って出かけていくじーじ。すっげ~外ヅラ良夫君なのであった。

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者
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