ワクチン接種後、お風呂に入ってもいいのか?
ワクチン接種の1回目。ソ連製のワクチンしか摂取しないと言っていたじーじだが、無事ショートステイでお泊り接種をして帰ってきた。副反応のことが気になったので、送迎車の到着を玄関先で待つことに。
いつもは「今回もお世話になりました」とにこやかに車から降りてくるのだが、この日のじーじの表情はすさまじく険しい。おまけに送ってきてくださったドライバーさんに向かってブツブツ文句を言っているではないか。外面良夫君(GGO編集部注:外面のいい認知症の父親はこう呼ばれている)にしては珍しい光景だ。
困り果てた表情のドライバーさんは、私の顔を見て苦笑い。いつもは、玄関に入るまでを見届けてくださってから帰るのだが、そそくさとお帰りなってしまった。きっと、車の中でじーじが何か言い続けていたのだろう。
家に入ってからもじーじはブツブツ文句が止まらない。よほどお気に召さないらしいが、今ここで私が声をかけると怒りん坊星人に変身しかねないので、放置することにした。
しばらく様子を伺ったあと「ワクチン接種痛かった?」と尋ねてみた。すると「俺はなぁ、騒ぎを起こしてやったんだ」とニヤリと笑みを浮かべて急に誇らしげな表情に一変したではないか! 騒ぎを起こしたとは穏やかでないが…ちょっと面白そうだ。
「あいつらはな、細菌学のことは何も解かっとらんようだ。俺はな、ストレプトマイシンを発明したクラーク博士から細菌学を学んだから、細菌学に関してはそこらへんの医者より詳しいんだ。だからな、あいつらに色々教えてやったんだがな」
クラーク博士がストレプトマイシンを発明したなんて聞いたこともないが、そこは気にしない。
「ワクチンを接種した日には、風呂に入ってはいかんというのは、細菌学では当たり前のことなんだ。なのに接種したその日に風呂に入れというんだ」
どうやら、接種した日に「お風呂に入れ」と言われたことがお気に召さなかったらしい。
「俺は、なぜ風呂に入ってはいけないかを何度も職員に説明したんだが、お風呂に入っても大丈夫ですよ、と言うばかりで話にならん。頭にきたから、風呂に入って良いと指示した奴を呼んでこい! と怒鳴りつけてやった」と、めちゃめちゃうれしそうに話すじーじ。
「おまけにな、俺が一生懸命説明しているのに、だんだん、俺の周りから職員がいなくなって、最後は誰もいなくなったんだ。まったくけしからん!」
どうやら、ごねているじーじの周りから職員さんがいなくなったことにもご立腹らしい。