病弱な弟が亡くなったあとも、弟嫁は実家から出ることなく両親との生活を継続。離れて暮らす姉は、弟嫁が実家で暮らし続けることも、弟の子が実家を継ぐことにも異論はありませんでしたが、よかれと思って預けた老父の通帳から大金が使われたのを知り、焦りを覚えます。弟嫁から通帳を取り戻し、父親の医療費と自身の相続分を確保することはできるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

弟亡きあと、相談者の実家でひとり暮らしする弟嫁

今回の相談者は、60代の浅田さんです。実家の父親の相続をどうすればいいか、というのが主な内容でした。浅田さんの母親は3年前に亡くなっており、病弱だった弟は母親よりも前に亡くなっています。そのため、父親の相続人となるのは、浅田さんと亡弟の2人の子どもです。

 

 

弟家族は両親と同居してきたため、弟が亡くなったあとも弟嫁と子どもたちは一緒に生活していました。その後、弟の子どもたちは仕事や結婚を機に家を離れてしまい、現在では、父親も体調を崩して入院し、そのまま介護施設に入所してしまったため、実家には弟嫁がひとりで暮らしとなっています。

 

浅田さんは結婚して実家を離れており、車で3時間ほどかかる場所に住んでいます。両親が元気なときも、なかなか実家には行けなかったため、弟家族が同居してくれることをありがたいと思っていました。

 

残念ながら、弟は若くして病死してしまいましたが、実家で育った甥が実家を継いでくれるという暗黙の了解もあり、浅田さん自身も、実家は弟家族のものでよいと思ってきました。

「すぐ駆けつけられなから、通帳は預かっておいて」

浅田さんの父親が入院するとき、通帳は浅田さんに預けたいとの希望を口にしました。それまでは父親自身で管理してきたため、同居する弟嫁であっても、預けるつもりはなかったようなのです。

 

しかし浅田さんの自宅からは、実家へ行くにも、父親の入院先の病院に行くにも車で2時間以上かかります。そのため、何かあってもすぐに駆けつけることができないかもしれないと思い、浅田さんのほうから弟嫁に「私はすぐ駆けつけられないから、通帳を預かっておいてくれる?」といって、父親の通帳を預けてしまったのでした。

 

しかし、数ヵ月後に問題が発覚することになります。浅田さんが久しぶりに実家に寄ってみたところ、見慣れた実家の様子が一変。黒かった屋根はピカピカの赤色に、玄関から見渡す室内は、壁紙やキッチンが真新しくなっていたのです。

 

「ちょっと美紀さん! この家、いったいどうしちゃったの?」

 

「あらお姉さん、早かったわね。そうなの、屋根や水回りが傷んできたかなと思って、修繕したのよ。私のいとこが同級生に工務店の社長がいるからって紹介してくれて、格安で引き受けてもらったの。いいでしょ?」

 

「お金はいったいどうしたの?」

 

「お金? お義父さんの通帳からだけど?」

弟嫁は、ためらうことなく300万円も…

この修繕工事について、浅田さんへの事前の相談や報告はありませんでした。リフォームにかかった費用は約300万円。

 

父親の財産は、相続評価800万円の自宅と預金700万円です。弟嫁は父親の通帳を預かったことを利用して、あっという間に300万円を使ったのでした。

 

弟嫁が平然と父親の預金からお金を使ったと言い放ったのを聞き、浅田さんは父親の通帳を預けたことを心底後悔しました。

 

浅田さんとしては、亡弟の子が実家を相続し、弟嫁が住み続けることに異論はありません。それだけに浅田さんは、父の介護に使った残りの預金を相続したいと考えていました。しかし、今回のように貯金がどんどん使われてしまうと、自分の相続分はおろか、父が存命中の介護費用も残らないかもしれないと思いはじめました。

 

このような場合、一体どうすればいいのでしょうか。

 

あああ
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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