老人ホームとは無縁の人たちが入居し始めた
老人ホームが急増した本当の理由
少子高齢化で老人ホームが急増した、と言われています。
はたして本当にそうなのでしょうか? 高齢者の急増や少子化によって独居老人が増えたので老人ホームも増えた。たしかに、その側面はあると思います。
しかし、単に高齢者の数だけで整理してしまうことに、多少の違和感を覚えます。なぜなら高齢化に対する対処方法は、介護保険制度の中だけでも、老人ホームの他にも訪問介護や通所介護をはじめとする数多くの支援サービスが存在しているからです。
通説に反して、私は少し違う見方で考えてみようと思います。
老人ホームが増えた本当の理由は、不動産ビジネスとして成立しているからではないでしょうか。老人ホームビジネスは、地主さんが老人ホームを造り、運営会社から一定の家賃を取って貸し付ける不動産賃貸ビジネスとして成り立っています。
借り受けた運営会社は、老人ホームに高齢者を入居させ、生活全般の世話をすることで月額利用料や入居金などを徴収する入居者管理ビジネスを行います。さらに今では、金融ファンドと称する会社が老人ホームを買い取り、運営会社から得る家賃収入を出資者に配当するというような金融商品にまで進化しています。
卵が先か鶏が先かの議論はありますが、要介護高齢者が急増したから老人ホームも急増したのではなく、老人ホームというビジネスモデルが成り立っているおかげで、老人ホームを運営する企業が急増し、結果、入居者も急増しているのだと私は見ています。
つまり、ニーズに対応して老人ホームが増えたのではなく、老人ホームビジネスが普及したので、それまで老人ホームとは無縁の人たちが老人ホームに入居するようになった、ということです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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