AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。ITやAIの技術革新の波は今後もとどまることはない。とはいえ、打つ手はあると公認会計士・税理士の藤田耕司氏は語る。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

専門知識やノウハウも無料で提供される

直接的技術的失業の例(2)「ウェブ上に存在する情報の無償化」

 

もう一つ、そう遠くない時期に技術的失業の可能性が高まる業務が、ウェブ上に存在している情報を顧客に提供する業務です。

 

手元のスマートフォンやパソコンで大量の情報が無料かつ瞬時に手に入るようになり、情報が持つ価値は劇的に下がっています。ひと昔前であれば、法律でわからないことがあれば、弁護士や司法書士、行政書士といった専門家への相談が一般的な解決方法で、多くの場合は相談料が発生しました。ところが、今では法律の概要から具体的な事例まで、さまざまな解説サイトがインターネットで存在します。また、各種届け出や申請、登記などの業務に関しても、自力で手続きする方法を紹介するサイトもあります。

 

こういったサイトの中には、フローチャートを使って視覚的に把握できるようにしたり、キャラクターが解説したり、動画で説明するなど、さまざまな工夫が凝らされ、素人でもわかりやすく専門知識を理解し、手続きができるようになっているものもあります。

 

このように専門知識は、(1)「ウェブ掲載」→ (2)「平易化」→ (3)「素人でも理解可能」というステップを経て、その価値が失われていきます。有益な情報を提供するウェブサイトは今後も増え続け、情報の平易化も進むでしょう。今は簡単な検索しかできないスマートスピーカーも、いずれは専門知識やノウハウをわかりやすく解説してくれるようになるかもしれません。

 

ただし、こうした無料のウェブ情報には、「信頼性」の問題がつきまといます。特に複雑な専門知識についてはユーザーも慎重を期すため、信頼できる専門家の意見を求めたいというニーズも一定割合は残るでしょう。とはいえ、今後の各種ウェブサービスの精度向上により、いずれは複雑な専門知識に関してもウェブ情報が信頼を得る日がくるかもしれません。そうなると、有料でこれらの専門知識を提供するビジネスモデルは成り立たなくなります。

 

藤田 耕司
一般社団法人日本経営心理士協会代表理事
FSGマネジメント株式会社代表取締役
FSG税理士事務所代表
公認会計士、税理士、心理カウンセラー

 

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経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

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