AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。ITやAIの技術革新の波は今後もとどまることはない。とはいえ、打つ手はあると公認会計士・税理士の藤田耕司氏は語る。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

士業の業務はすでに自動化の技術が完成

直接的技術的失業についてより詳しくお話ししましょう。

 

インターネットや雑誌では「AIが士業の仕事を奪う」といった記事が散見されます。たしかにAIの進歩や普及によって、市場は今後さらに変化し、技術的失業は加速することになるでしょう。

 

ただ、こうした記事の中には、どこまで現場の実態や消費者の心理を把握して書かれているのかについて疑問を覚えるものもあります。というのも、次の点が考慮されていない場合もあるからです。

 

技術的に業務の自動化が可能になるタイミングと、人が仕事を奪われるタイミングには時差があるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
技術的に業務の自動化が可能になるタイミングと、人が仕事を奪われるタイミングには時差があるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

(1)士業の業務には「パソコンでの作業」と「パソコン外の業務」がある。AIで自動化される業務は前者で、後者はAIによる自動化の対象外である

(2) 技術的には自動化が可能になっても、消費者にそのサービスを利用するためのリテラシーがないと消費者は利用しようとはしない

(3)前記(1)(2)の要件が整ったとしても、その商品やサービスに対する一定の信頼が得られない限り消費者は利用しようとしない

(4)前記(1)~(3)の要件が整ったとしても、技術の導入に伴うコストが人間を雇用する場合のコストを下回らない限り、自動化しようとはしない

 

つまり、技術的に業務の自動化が可能になるタイミングと、人が仕事を奪われるタイミングには時差があるのです。このタイムラグを、経済学の用語で「ディフュージョン」といい、実際には「技術の誕生」→「ディフュージョン」→「技術的失業」→「労働移動」という流れをたどることになります。

 

ただし、士業の業務の一部はすでに自動化の技術ができつつあり、ディフュージョンの期間も短期と見込まれる業務もあります。その代表的なものに「パソコン上での単純作業」と「ウェブ上に存在している情報の提供」が挙げられます。それぞれ見ていきましょう。

次ページなぜ士業の仕事が自動化されるのか
経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。 起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始…

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