「中高年層になっても英語論文の発表に取り組んでみてはいかがでしょうか」。通常、論文執筆は若手医師を主体とした活動であり、40歳を超えると縁遠くなる医師がほとんどだ。ところが現役内科医の筆者はあえて逆張りの提案をしつづけている。その深い理由とは? ※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

専門分野や国境を越えたソーシャル・キャピタルを形成

英語論文に取り組むことのもう一つの効用は、ソーシャル・キャピタル、すなわち社会関係資本の形成にも役立つ面があることです。ご存知のように、英語の医学論文は著者が自分一人だけ、ということは珍しく、通常は複数の著者がグループになって執筆します。そのグループは、大学の医局や研究室をベースにするのがよくある形です。

 

しかし、私の場合は、共通の課題を見つけることができて論文に興味がある方であれば、共著者として幅広く一緒にやる方針としています。専門分野や所属にこだわらず、臨床医だけでなく学生や看護師など、いろいろな方に参加していただいています。時には、中国やネパールなど海外の専門家と一緒に論文を書くこともあります。

 

そのベースとなっているのが、週1回の医療ガバナンス研究所内で行っている勉強会です。通称、「谷本勉強会」と呼ばれています。

 

勉強会といっても、一日の診療業務が終わった夜に数人で2時間集まる程度の、こじんまりとした形です。本業が忙しい人が多いので自由参加としており、誰も集まらないことも珍しくありません。そのためリアルで集まる勉強会の他に、数十人のSNSのグループをFacebookメッセンジャーで作っています。メッセンジャー上では、最新の論文の紹介や意見交換、推敲原稿のやりとりを時間があれば随時行っています。

 

大した活動ではありませんが、それでも、かれこれ10年近く続けています。そのおかげで、専門分野や所属施設、年代や国境を超えた人間関係を形成するのに大変役立っています。もし英語論文の勉強会をせず、日常の臨床業務だけやっていたら、私の社会関係はずっと狭いものになっていたでしょう。英語論文の執筆を通じてできた勉強会の仲間が、私の重要なソーシャル・キャピタルになっているのです。

 

論文を書くのは、医学部教授とか研究者など一部の人たちだけが行うことではありません。一般の臨床医も含め、もっと多くの人が論文を書くべきです。野球やサッカーがトッププロ選手のものだけでなく、近所の素人や子どもまでプレーし裾野が広がることでレベルが向上するのと同じでしょう。私の活動の詳細は『生涯論文!』に記しましたので、ぜひお読みいただければと存じます。

 

 

谷本 哲也

内科医

 

 

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