サラリーマン大家は余裕なき収支計画をしない
そのことを理解していながら、川村さんはなぜ収益不動産を買い進めたのか。
始めたきっかけは、30歳を過ぎたころ、節税対策としてワンルームマンションを買ったことだった。確定申告をすることで税金の基本的な知識を習得できたというメリットは感じたものの、利回りが低かったため、不動産投資で大きく儲けるためには土地付きの一棟ビルかアパートを購入する必要があると気づいたのだという。以後、質素倹約に努め、不動産購入のための資金を貯めながら、不動産会社回りにいそしんだ。2000年前後の、まだ今ほどインターネット上で物件情報を探すことができなかった時代だ。物件情報は徐々には集まり始めたが、なかなかいい物件とは巡り合えなかった。
待つこと3年。ようやく東京都世田谷区のビルを購入することができた。2002年のことだった。以来、最大3億円の融資を受けていたこともあったが、徹底したコスト管理と入居者対策で、収益性が高い賃貸経営を実現し、あと2年半で大半の不動産のローンが完済できるという。
川村さんは、利回りを高めるために不可欠なのは、「不動産を安く買うこと」と「運営コストの削減」と考え、自主管理を徹底してきた。管理委託料は全収入に対して5〜7%と、一見、少額に見えるが、借入比率が高い場合、税引き後キャッシュフローに占める割合は、決して小さくないという。
例えば、年間家賃収入1000万円の場合、管理会社に支払う管理手数料は家賃収入の5%で50万円かかる。その他清掃、補修費用などが年間で50万〜100万円かかることを想定したら、合計で100万〜150万円かかる。この経費が自主管理することによりどの程度変わるのかというと、税引き後キャッシュフローが200万円の人なら、300万円から350万円に上がるということだ。
ただ、サラリーマンや他の事業を抱えながら、管理会社に委託せずに賃貸経営をするのは大変だ。遠隔地に購入した場合は、なおさら自主管理は難しい。つまり、サラリーマンの方たちに自主管理が「必要不可欠」と言いたいわけではない。重要なことは、管理会社に委託しなければ時間が足りないというサラリーマンこそ、「余裕なき収支計画をしない」ということだろう。
不動産会社はさまざまなセールストークで早く決断させようとする。
「不動産は水物です。今ここで買わなければ二度とこの不動産は買えないですよ」とか、「あなたが買わないのであれば、他にもたくさんいる買いたい人たちに、この不動産を紹介します」など、「今買わなくては損する」と思わせるトークを炸裂させる。
ここで冷静になって、本当に買うべき不動産なのかどうかは、キャッシュフロー表でシミュレーションし、十分に検討して判断すべきだ。買う不動産、買わない不動産、自身の中できちんと軸ができていれば、失敗するリスクは最小限にとどめることができる。
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
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