キャッシュフロー表で不動産購入の判断ができる
このキャッシュフロー表の作成時のポイントは、2年目以降の数字入力にある。まず、収入源である家賃収入は変化することを押さえるべきだ。家賃収入を購入時と同じ金額で長期のシミュレーションをしてはいけない。賃貸住宅は築年数が古くなればなるほど、リノベーションを施さない限り、家賃が下落する傾向にあるからだ。そのため、経年と同時に減少するという前提のシミュレーションで入力することが重要になる。
また経費についても、経年すると、減価償却費は減っていく。この表は建物付属設備の減価償却費が定率法を採用できた物件のシミュレーションで、建物付属設備も建物と同様に定額法のみとなった今とは、減少具合が変わるが、10年で建物付属設備の減価償却が終わるとその分減る。借入金利息も元利均等返済の場合は減る。一方で、修繕費は最初不要でも経年すれば修繕が発生するため増える。つまり、経年するにつれて、よほどの特需がない限り、収入は減り、経費計上できる金額が減り、支出は増えるわけだ。すると、所得税額が上がる一方で、税引き後キャッシュフローが減るという事態になる。
税金を差し引くと、1年目は143万9536円、2年目は136万3693円と徐々に減っていき、10年目になると、59万8747円となってしまうのだ。このキャッシュフロー表は紙面の関係で一部しか掲載していないが、11年目以降は、税引き後キャッシュフローが15年目から19年目までマイナスとなる。
この不動産購入での失敗は、ほぼフルローンでの購入だ。こうした状況にならないためには、購入したい不動産が見つかったら、キャッシュフロー表を作り、自己資金をいくらまで入れれば、購入後マイナス収支にならずに経営できるのかを検証することが重要だ。
この検証さえできれば、不動産販売会社から提示される収支計画表の内容を理解でき、提案された不動産を購入していいのか、購入しない方がいいのかの判断をすることができるだろう。
「地主家主」と「サラリーマン家主」はここが違う
家主業というと、基本的には代々土地を持っている地主が、その土地を活用してアパートやマンション経営を始めるケースが圧倒的に多い。そんな「地主家主」と、土地がないところから不動産を購入して始める家主とを同じように考えてはいけない。
「私もサラリーマン出身だが、建物部分だけ借金するのと、土地・建物の両方を借金するのとでは借り入れ負担が違いすぎる」と川村さんが話すように、土地活用で経営する家主とでは「発射台」が違う。土地の取得費が必要か必要でないかという必要な資金の規模だけでなく、土地代が経費にならないことは税金面から見ても大きな負担となる。