そもそも特養は低所得者向けの老人ホームだった
「住宅型有料老人ホーム」のわかりにくい実態
私はこれまでの著書の中で、「住宅型有料老人ホーム」は運営実態に照らして説明をする場合、とうていうまく説明することはできない、と主張してきました。
つまり、「特養」や「介護付き有料老人ホーム」と、この「住宅型有料老人ホーム」との“違い”はいったい何なのか? という読者の皆さんの質問に対し、法制度や基準などの違いを説明すること可能なのですが、運用実態の説明はきわめて困難であるということになります。
端的に申し上げると、制度や基準の違いを運用力で補い、実態は、特養や介護付き有料老人ホームと何ら変わらない運営を行っている住宅型有料老人ホームが非常に多いということです。
つまり、入居者にとっては、介護付き、住宅型の老人ホームに関する法的な違いを理解すること自体は、それほど重要なことではないと考えています。
制度に翻弄された「特養」の悲劇
そもそも特養とは、低所得者向けの老人ホームでした。いわゆる、社会の中のセーフティーネットです。認知症などの理由で在宅生活が困難になった高齢者に対し、行政などを中心とした高齢者福祉の専門家らにより、特別養護老人ホームに入所したほうがよいと判断した場合に入居することができる仕組みでした。これは、「措置」と呼ばれています。
当然、高額な費用負担をすることができない入居者を対象としていたので、居室は病院のように多床室です。大きな部屋をカーテンで仕切り、ベッド中心の居住空間で生活します。トイレは居室の外に共同のものが配置されています。だから居住コストを低く抑えることができ、低価格で提供することが可能になるのです。