相続には思わぬ落とし穴があります。その一つが「特別受益」。学費など生前に被相続人から支払われた資金や、生命保険金といった原則遺産には含まれないものが、相続時にトラブルの火種と化すのです。万が一のことが起きないように法律を押さえておきましょう。※本連載は、NPO法人長寿安心会・代表理事を務める住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

生前、両親が注ぎ込んだ「莫大な資金」が相続の火種に

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【事例】

両親は「次男をぜひ医師に」と思い、他のきょうだいとは違って、破格の学費や開業資金を注ぎ込みました。いざ相続となると、おさまらないのは他のきょうだいたち。これまで次男にかけた費用もすべて遺産に算入して分割すべきと大揉めです。何十年も前のことなのですが…。

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(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続の落とし穴…「特別受益」とは?

相続には思わぬ落とし穴があり、トラブルの種があります。その一つが「特別受益」です。

 

特別受益とは、一部の相続人が、亡くなった人から生前、「マイホーム資金・結婚祝い(支度金)・開業資金」などの名目でまとまった金額、すなわち、「生計を立てていくうえでの資本」といえるような、多額の利益を受けたものをいいます。

 

結婚祝い(支度金)は今後の生活の資本といえますし、婚礼家具も同様なので特別受益になります。その際挙式費用については、二人のためではありますが、同時に親や親族も関係するので、特別受益には含まれません。

 

普段の生活費や小遣いなど、親族間の扶養義務の範囲内の援助といえるような額の金銭のやり取りは、特別受益に含まれません。誕生日のプレゼント、成人式や入学式の礼服・着物なども、よほど高価な品か、多額にならない限り、社会慣習上の贈り物です。

特別受益か否か?相続で揉めやすい具体例

よく問題となる例について説明しましょう。

 

●学費

例えば、「長男だけ4年制の大学に進学させ、弟や妹は高校までしか進学させなかった」というように、きょうだい間で格差がある場合などには、大学の学費相当額が特別受益に含まれるとされる場合があります。

 

きょうだいのうち一人だけ特別に海外留学した場合や、何年か浪人して私立医学部に行かせるなど、高額の学費を出した場合もこれに当たる場合があるでしょう。

 

●生命保険金

生命保険金は税務上、遺産として相続税の課税対象となりますが、民法上は受取人固有の財産であり、遺産には含まれないとするのが原則です。

 

ただし、一部の相続人だけが遺産総額と比較して、相当高額な生命保険金を受け取ったという場合には、例外的に特別受益に含まれる場合があります。

 

一概には言えませんが、判例法理によれば、「遺産総額に対する生命保険金の比率、各相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態など、諸般の事情を総合的に考慮して」判断されることになります。なお、生命保険金には法定相続人1人につき500万円の非課税枠があります。

 

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