相続には思わぬ落とし穴があります。その一つが「特別受益」。学費など生前に被相続人から支払われた資金や、生命保険金といった原則遺産には含まれないものが、相続時にトラブルの火種と化すのです。万が一のことが起きないように法律を押さえておきましょう。※本連載は、NPO法人長寿安心会・代表理事を務める住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

遺産分割を公平にする「持ち戻し」の制度

遺産分割や遺留分の計算に際して、原則10年以内の特別受益を遺産の中に持ち戻して(繰り入れて)計算します。その特別受益の財産評価は相続開始時点が基準です。

 

この法律改正によって、「30年前にマイホームの頭金を出してもらった」「40年前に嫁入り道具一式を買ってもらった」などの過去に遡っての泥仕合はなくなりました。

 

もっとも、例外として、後述の【改正民法】第1044条第1項の後半部分、第3項にあるとおり、亡くなった人と贈与を受けた相続人の双方が、「遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、10年前の日より前にしたものについても」持ち戻すこととされています。

 

遺留分を侵害するほどの多額な金額だとわかっていながら贈与した場合には、10年より前のことであっても遺産に繰り入れて算定するのです。公平の原則から当然の規定でしょう。

遺留分を侵害しない範囲でできる「持ち戻しの免除」

このように、この10年内の特別受益があると、原則的に持ち戻し計算することになりますが、持ち戻しの免除が行われるケースがあります。

 

持ち戻し免除とは、被相続人が、生前持ち戻しをしなくてよい(遺産に繰り入れない。相続分の算定にも計算しない)という意思表示をしていた場合です。この特別受益の持ち戻しの免除の意思表示の方法には、特に指定された要式はなく、書面でも口頭でもかまいませんし、明示であっても黙示であってもかまいません。

 

しかし、後になって、相続人間で争いが起こることを予防するために、書面にしておく、それも遺言に記載しておくことが被相続人の意思を明らかにし、相続人全員が納得するために、最適でしょう。

 

ただし免除したとしても、他の相続人の遺留分を侵害することは許されません。その金額の限度で、持ち戻しの免除は無効になるということです。遺言で、遺留分が侵害できないということと同じ意味です。

 

なお、特別受益の持ち戻し計算は、相続人間の公平な遺産分割を行うための手続き制度ですので、共同相続人全員が、特別受益の持ち戻し計算をせず、残った遺産のみを遺産分割の対象とすることに合意しているのであれば、それはそれで有効です。遺産分割はそもそも、遺言があっても、相続人全体が合意して決めることができるからです。

 

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シニア六法

シニア六法

住田 裕子(監修、著)

KADOKAWA

実は知らない、「いざ」というとき便利な法律。 変わらず多いオレオレ詐欺、近年増える高齢者による交通事故。認知症ならではのトラブルに、介護にまつわるトラブル…。 いざトラブルに巻き込まれたとき、どういう法律が…

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