不当な価格で強引に買収…押し売りならぬ「押し買い」
【事例】
「いらなくなった、テレビ・ラジカセなどの家電製品を買い取る」という業者を自室に入れたところ、「他に貴金属もあるのではないか」と勝手に探されて高価な腕時計を見つけられてしまいました。「これは売れない」と言ったのに、5千円札を押しつけられて持っていかれてしまいました…。
訪問販売とは、自宅に業者を入れて売買契約を結ぶことであり、押し買いも含まれます。第三者の目がないところですから、悪徳業者の付け入る隙が処々にあります。悪質で取り締まりの必要な手口が出てくると、直ちに法を改正して厳しく規制しています。
訪問販売に際して、「特定商取引に関する法律」では「故意に事実を告げない行為をしてはならない、威迫してはならない、困惑させてはならない」また、「招かれていないのに勧誘しない(不招請勧誘)」さらに、「売却を断わられているのに引き下がらず勧誘を続けてはならない」などの禁止行為を定めています。
8日以内の「クーリング・オフ」が有効
このような契約をしてしまったときは、8日以内に書面で申し出れば、契約をなかったことにできます。契約をなかったことにすること・解消することを、法律では「申し込みの撤回・契約の解除」といい、一般には、「クーリング・オフ」といいます。
この期間は短く設定されていますが、クーリング・オフができることを説明しないなどして隠したり、脅しや困惑したためにその影響から業者に申し入れすることができなかったりした場合は、それができるようになったときを起算点にします。
クーリング・オフは書面で郵送する必要がありますから、契約書などを持参して、消費者相談の窓口で書き方を聞きましょう。
クーリング・オフをしたときに、品物の返却などに手間や労力がかかるかもしれませんが、業者がそれらの費用を請求することは禁止されています。さらに、消費者にとって不利な条項は無効にするという強い規制もありますので、これらの法的手段を知っておきましょう。
<その他の条文>
【特定商取引に関する法律】第58条の14(訪問購入における契約の申し込みの撤回等)
<抜粋>
第1項 購入業者が営業所等以外の場所において物品につき売買契約の申し込みを受けた場合におけるその申し込みをした者は、書面によりその売買契約の申し込みの撤回、またはその売買契約の解除を行うことができる。ただし、申し込み者等が第58条の8の書面を受領した日から起算して8日を経過した場合は、この限りでない。
第6項 前各項の規定に反する特約で申し込み者等に不利なものは、無効とする。
住田 裕子
弁護士(第一東京弁護士会)
NPO法人長寿安心会 代表理事