最近増加しているのが、生前に親を他のきょうだいと会わせないようにする「囲い込み」と、親の財産管理をしていた子どもの「使い込み」をめぐる相談です。さまざまな事例を踏まえて見ていきましょう。※本連載は、NPO法人長寿安心会・代表理事を務める住田裕子弁護士の著書『シニア六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

「母親と連絡が取れない」…長男の相談

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【事例①】

父はすでに亡くなり、86歳の母が妹一家と同居中です。自分が母の携帯電話にかけると母は出ず、妹が出ます。妹に「今度遊びに行くよ」と言うと、妹は「母さんは兄さんに会いたくないと言っている。連絡もしないでほしい」と言って電話を切ってしまいました。こんなふうに言われる覚えはないので、なんとか一度母親と会って誤解があるのなら解きたいと思っているのですが…。

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(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

近年増加する「囲い込み」、過去の判例を見ると…

まずは、話し合いです。他のきょうだいや親族等の信頼できる人に相談し、間に入って事情を聞いてもらいましょう。らちがあかなければ、弁護士を通して母との面会を求め、事情の説明も求めます。それでも拒否されれば、家庭裁判所に親族関係調整調停、親族間の紛争調整調停を申し立てることになります。

 

参考になる裁判例があります。兄が、認知症で施設に入所している両親を妹に会わせないようにした事案です。

 

「子が両親の状況を確認し、必要な扶養をするために、面会交流を希望することは当然であって、それが両親の意思に反し両親の平穏な生活を侵害するなど、両親の権利を不当に侵害するものでない限り、債権者(妹)は両親に面会をする権利がある」と明言して面会妨害禁止の仮処分を認めました(横浜地方裁判所平成30年7月20日決定)。

 

また、三女が母親と面会することを長女と次女が妨害したことについて、三女から長女と次女に対する慰謝料等110万円の請求が認められた裁判例もあります(東京地方裁判所平成30年12月6日判決)。

 

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シニア六法

シニア六法

住田 裕子(監修、著)

KADOKAWA

実は知らない、「いざ」というとき便利な法律。 変わらず多いオレオレ詐欺、近年増える高齢者による交通事故。認知症ならではのトラブルに、介護にまつわるトラブル…。 いざトラブルに巻き込まれたとき、どういう法律が…

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