もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

サ高住は介護付き有料老人ホームの代わりだった

そこで登場したのが、「住宅型老人ホーム」と「サ高住」という新しい商品だったのです。

 

「住宅型老人ホーム」の話は後ほど触れます。早速、老人ホーム事業者は、「サ高住」に飛びつき、介護付き有料老人ホームの代替品として、サ高住の運用を大幅に拡大解釈し、介護付き有料老人ホームと同じ、あるいは、介護付き有料老人ホームよりも要介護者にとって便利だと言って、建物建設を促進し、入居者募集を行いました。つまり、トンネルに入り、行き詰まった老人ホーム事業者にとっては、出口の一つになったわけです。

 

さらに事業者の思惑を後押ししたのが、国が定めた助成金制度です。おおむね、総建設費の1割程度は助成金が支給されるため、建設会社がこぞって、地主さんに「サ高住」を提案しまくりました。

 

 

「地主さん、普通の賃貸マンションを建てるのであれば、サ高住を建てましょう。サ高住なら建設費の1割の助成金が受け取れますよ。さらに、今後は高齢者が急増するので、今の賃貸マンションや学生向けマンションよりも安定したビジネスになりますよ」

 

などと言って、サ高住を運営する事業者と組んで建てまくりました。多くの地主さんや家主さんは、学生相手に賃貸マンションやアパートを持っていましたが、少子化により空室が目立っていたこともあり、この理屈を「理にかなっている」と受け止め、建設をしたようです。

 

私は、サ高住を建てたことが悪いと言っているのではありません。サ高住を介護付き有料老人ホームの代替品として利用したことが悪い、と言っているのです。

 

特養には、特養の、介護付き有料老人ホームは、介護付き有料老人ホームの役割があります。当然、サ高住にはサ高住でしか実現できない役割があります。しかし、残念ながら、今のサ高住は、その役割をはたしてはいません。本音では、介護付き有料老人ホームにしたかったのだけど、行政の総量規制で介護付き有料老人ホームを建てることはできないので仕方なくサ高住で、という風潮の中で増殖してしまいました。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

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