もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

中長期の投資で回収できなくなった介護ビジネス

少しややこしくなってきました。ちなみに、私が老人ホームの運営をしていたときは、介護付き有料老人ホームの建設や運営に対する総量規制などはなかったことを、まずは記しておきたいと思います。

 

小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)
小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)

冷静に考えれば、当初からわかっている話ですが、2000年に介護保険制度が始まり、民間の営利法人に対し、介護事業が解禁になりました。中でも、老人ホーム事業は、売上ボリュームが大きいので、多くの民間企業が参入し、急激に市場は拡大していきます。ちなみに、老人ホームビジネスの特徴は、イニシャルコストといって、老人ホームを建設する多額の開発費が必要になります。

 

そして、この多額の開発費の回収は、入居者から徴収する入居金や月額利用料金から回収するスキームになっていますが、当然、一人の入居者から一度に多額の費用をいっぺんに回収することはできません。入居金の場合、5年から10年で償却するホームがほとんどなので、言い換えれば5年越し、10年越しに回収していると言えます。

 

国が介護保険という制度を作り、民間の営利法人に対し自由に参入させ、その結果、この競争に参加する営利法人数とホーム数が想定外に増えてしまいました。ホーム数が増えると、保険者である自治体が負担する介護保険報酬額も、当然増えていきます。高騰する介護保険報酬額に「困った」と言って、一方的に総量規制をかけて、「もう介護付き老人ホームは作らせませんよ」となりました。

 

正確には、地方自治体に対し、事業者に支払う介護保険報酬の支払い額と自治体の体力とを鑑み、介護保険計画を作成させ、今期は介護付き有料老人ホームは100室しか新設を許可しないと、やったのです。

 

多くの民間事業者は、当然ですが、1つや2つの老人ホームを建設し、収支を整えようとは考えません。中長期的に投資を行い、損益分岐点を設定、それまでは赤字体質だが、損益分岐点を超えれば、黒字が継続していく、といった経営戦略を立て、事業規模や利用料金などを決めて、会社としての事業計画を立てています。

 

あと200室の入居者を獲得すれば黒字に転換すると見込んでいた事業者がいた場合、ある日突然、もう自由に作らせませんよと言われれば、途方に暮れるはずです。もう作れないなら、永久に赤字だと考えた事業者も多くいたと思います。

 

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