権利行使の仕方にも「礼儀作法」は必要ではないか?
介護保険制度と有料老人ホームについて
有料老人ホームの運営資金は、公的な介護保険報酬と入居者が負担している利用料、つまり家賃や管理費などで賄われています。ちなみに、介護保険報酬の原資は、40歳以上の国民が負担している介護保険料と、行政が負担する税金です。端的に申し上げると、こういうことになります。
とくに、介護保険報酬には多額の税金が投入されていますから、老人ホームの入居者や家族も、公的資金によって自分たちの介護ケアは維持されているのだということを理解する必要があります。
もう少し詳しく確認していきましょう。たとえば、介護付き有料老人ホームの場合、要介護2を認定された入居者が入居した場合、自己負担である月額利用料(家賃、管理費、食費など)とは別に、介護保険報酬として約20万円を国の保険機関から有料老人ホームは受け取ることができます。厳密に申し上げますと、介護保険制度には利用者負担が若干あります。入居者の自己負担額が1割負担の入居者の場合は、20万円の1割である2万円を自己負担し、18万円が保険機関から有料老人ホームに支払われます。
私が何を皆さんに訴えたいのかというと、有料老人ホーム内で提供される介護サービスは、おおむねが公的費用で賄われているということです。よく介護保険関係者が、介護サービスは個別の契約に基づいて提供されるものであり、利用者には「権利がある」というたぐいの話をしますが、私は、それはまったくの間違いだと考えています。
もちろん、介護保険がなく、前出の話の場合、20万円全額を自己負担で有料老人ホーム側に支払っているのであれば、権利があることに否定はしません。しかし、入居者側は、たった1割か2割しか負担してはいないのです。これで「権利がある」と主張することに対しては、大きな違和感を覚えます。百歩譲って権利があることは認めてもいいですが、権利行使の仕方にも「礼儀作法」はあるのではないでしょうか。