少子化の進展により、労働力不足の問題が深刻化の一途を辿る日本。今後、企業の人材獲得競争は激化するばかりです。人材を確保するにはどうすればいいか。多くの企業は女性や外国人の採用を考えるでしょう。しかしそれらは本当にうまくいくのでしょうか? データを用いて検証してみると…。※本連載は、石黒太郎氏の著書『失敗しない定年延長』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

女性を積極採用しても…止まらない「労働者数の減少」

若手以外の人材確保の具体的な対象プールとして、女性・外国人・シニアなどの人材が思い浮かぶ読者も多いと思います。また、その発想はダイバーシティ経営の考え方に合致します。元々は米国における雇用差別撤廃をルーツとするダイバーシティ経営ですが、生産年齢人口の急激な減少が確実な日本においては、ダイバーシティ経営の推進こそが人材確保の最優先施策になり得ます。

 

そこで、それぞれの人材プールを検討していきます。まずは女性人材から見ていきましょう。結論から申し上げますと、女性活躍推進だけで生産年齢人口の減少を量的な観点からカバーすることは困難です。

 

図表2は、生産年齢人口の就業率を男女別に示したグラフです。2018年現在で、男性の就業率が約84%、女性が約70%あります。

 

出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和元年版」
[図表2]生産年齢人口の男女別就業率 出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和元年版」

 

実際の就業者数は、男性が3717万人、女性が2946万人であり、これらの数字から女性活躍推進による労働力確保の量的ポテンシャルを計算することができます。仮に女性の就業率を男性並みの84%まで伸ばすことに成功したとしましょう。その場合、2946万人÷70%×84%=3535万人となり、女性就業者数が約600万人増えることになります。

 

ただし、生産年齢人口そのものも今後減少していきます。2045年までの生産年齢人口の減少率を25%として加味すると、3535万人×75%=2651万人となり、現状に対してマイナス295万人になってしまいます。つまり、女性の就業率を男性並みの84%まで伸ばしてもなお、将来の労働者数の減少を止めることはできないということです。

 

また、女性の就業率84%の実現性に関しては、図表3をご覧ください。これはOECD諸国における生産年齢女性の就業率を比較したグラフです。非正規雇用を含んだ数字ではありますが、日本における女性の就業率はフランス、スペイン、イタリアなどのラテン系ヨーロッパ諸国や米国を上回っています。また、トップのアイスランドですら、女性就業率は83.3%です。日本の女性就業率を男性並みの84%に伸ばすことがいかに難しいかが分かります。

 

出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和元年版」
[図表3]OECD諸国の女性(15~65歳)の就業率 出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和元年版」

いかに「職務価値の高い仕事」を担ってもらうかが重要

女性活躍推進のあり方について少し補足しておきますと、重視すべきは女性社員の数ではなく、女性社員に担ってもらう仕事の質です。図表4は各国の就業者と管理職の女性比率を示したものです。管理的職業従事者の女性比率を見ますと、日本の数字は明らかに諸外国に見劣りします。

 

また、総務省による令和元年労働力調査年報によれば、日本における働く女性の非正規雇用比率は全体の半分強の約56%であり、その8割近くがパートタイム雇用です。女性活躍推進については、「いかに女性に職務価値の高い仕事を担ってもらうか」という質的側面に、特に力を入れる必要があります。

 

出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和元年版」
[図表4]就業者および管理的職業従事者に占める女性の割合 出所:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和元年版」

 

2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>

 

注目のセミナー情報

​​【税金】11月27日(水)開催
~来年の手取り収入を増やす方法~
「富裕層を熟知した税理士」が考案する
2025年に向けて今やるべき『節税』×『資産形成』

 

【海外不動産】11月27日(水)開催
10年間「年10%」の利回り保証
Wyndham最上位クラス「DOLCE」第一期募集開始!

次ページ「規制緩和で外国人雇用が進むのでは?」
失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

石黒 太郎

光文社

シニア活用こそが、人材不足解消の最後の砦。 「定年延長」に失敗すれば、日本経済は必ず崩壊する…。 少子化の進展により、日本の生産年齢人口は急激に減少中。さらに、バブル期入社組の大量定年退職が秒読みに入ったこ…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録