新入社員の3割超が「5年以内の転職」を検討
前回の記事『東京圏のブラックホール現象…約7万人の若者が吸い込まれる』(関連記事参照)では、15~64歳の「生産年齢人口」に着目して、今後の雇用情勢が厳しくなることを解説しました。
ここで転職に関する労働市場動向についても確認しておきましょう。図表1は2000年以降の年間転職入職者数の推移を示したグラフです。これを見る限り、特に大企業において転職入職者数の変化が大きい状況です。2000年時点で34万人だったその数は、2016年には82万人にまで増えています。
今や、毎年の大卒新卒就職者数よりも、大企業への転職入職者数の方が多くなっており、大企業が歪んでしまった人員ピラミッドを是正するため、ないしは人材ポートフォリオの質的・量的適正化のためにキャリア採用を拡充している状況が窺えます。
また、若手の就労意識も、転職に対する抵抗感が薄れており、5年以内の転職を考えている新入社員の比率が3割を超えているという調査結果もあります。
そういった状況の中、若手を獲得するために思い切った待遇を用意する企業も出てきました。「AIなどの先端技術に強い」「有名学会で優れた論文発表をした」「インターンシップで著しい成果をあげた」などの学生に、年収1000万円超の報酬や新規事業の経営幹部ポジションを用意する企業もあります。大学新卒を一律の初任給22万円といった処遇で採用しているだけでは、外資系企業相手の優秀人材獲得競争に勝てない、という焦りから来る思い切った経営判断でしょう。
こういった特徴的な採用施策がどの日本企業にも推奨できる訳ではないものの、今後、若手人材を採用し、定着させることは、少子化の進展によって困難になる一方です。企業経営に必要十分な数の人材を安定的に確保し続けるためには、若手以外の人材確保に力を入れる必要があります。
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