少子化の進展により、労働力不足の問題が深刻化の一途を辿る日本。今後企業が生き残っていくには、経験豊かなシニア人材をいかに活用できるかが勝負です。とはいえ現状の危機をいまいち把握できていない企業が多いことも事実。ここでは生産年齢人口に着目し、今後の雇用情勢について解説します。※本連載は、石黒太郎氏の著書『失敗しない定年延長』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

2045年には4分の1に…激減する「15~64歳」の割合

少子高齢化が進展する日本。今後、日本企業が国内の若者を安定的に採用することは困難になる一方です。前回の記事『「大卒」が当たり前の時代…中卒から高卒へシフトの過去に学ぶ』では総人口に着目し、今後見込まれる変化について解説しました(関連記事参照)。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

総人口の推移に続き、生産年齢人口についてもマクロ変化を把握しておきましょう。図表1は、日本の人口を3つの年齢区分に分け、1920年から2095年までの175年間の推移をグラフにしたものであり、2020年以降のデータは予測値になります。

 

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」に基づき、筆者作成
[図表1]年齢3区分別人口の推移 出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」に基づき、筆者作成

 

折れ線グラフの一番上の線が、生産年齢と言われる15歳から64歳の人口の推移を示しています。前節で日本の総人口のピークが2008年であったことに触れました。生産年齢人口のピークはそれより13年も昔の1995年であり、その数は8726万人です。これが2020年には7406万人にまで落ち込み、ピークから四半世紀で既に約1300万人減少しました。

 

しかし、生産年齢人口の減少はまだ始まったばかりと言っても過言ではありません。これから次の四半世紀でさらに約1800万人減少することが予測されています。具体的には、2045年に生産年齢人口が5584万人となり、2020年に対して約25%の減少、4人に1人がいなくなる計算です。

 

また、図表2は1995年と2020年、そして2045年の日本の人口ピラミッドを比較したグラフです。1995年から2045年までの50年間で人口が大きく減少し、2045年の生産年齢人口部分だけを見ると美しさすらある逆ハの字の、尻すぼみになってしまっています。つまり、生産年齢人口が減るだけでなく、日本全体の高齢化も同時に進んでいくという状況が見て取れます。

 

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」に基づき、筆者作成
[図表2]人口ピラミッドの比較 出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」に基づき、筆者作成

雇用情勢が激変…今後は「企業が圧倒的不利」な時代

こういった生産年齢人口の減少は、日本の雇用情勢にはっきりとした影響を及ぼしています。図表3は、平成9年(1997年)から平成30年(2018年)までの約20年間の有効求人倍率と完全失業率の推移を示したグラフです。
 

出所:厚生労働省 職業安定局 雇用政策研究会 第1回資料(2018)
[図表3]有効求人倍率と完全失業率の推移 出所:厚生労働省 職業安定局 雇用政策研究会 第1回資料(2018)

 

「求人倍率が高い」とは、求職者にとって有利な状況を意味し、連動して失業率が低くなる傾向にあります。逆に「求人倍率が低い」とは、採用する企業側にとって有利な状況であり、失業率は高くなります。

 

このように、有効求人倍率と完全失業率の2つは相反関係にあることを念頭に置き、図表3をご覧ください。平成14年(2002年)頃から、平成20年(2008年)のリーマンショックによる不況期を除いて、有効求人倍率は右肩上がり、完全失業率は右肩下がりの傾向にあることが、容易に見て取れると思います。

 

このことから、今後も日本の雇用情勢は求職者側に有利、採用する企業側に不利な状況が、不況期を除いて続くことが想定されます。特に若手獲得競争は、少子化進展によって激化することはあっても、鈍化することはないでしょう。

地方の若者を吸い込む「東京圏のブラックホール現象」

地方企業について言えば、人材確保において憂慮すべきは日本全体の人口減少だけではありません。東京圏(一都三県:東京・神奈川・千葉・埼玉)への人口一極集中も大きなマイナス要因となり得ます。

 

図表4は、東京圏の転入・転出者数の推移を示したグラフです。それぞれの年の左の棒が転入した人の数、右の棒が転出した人の数を表しています。

 

出所:総務省「 住民基本台帳人口移動報告」に基づき、筆者作成
[図表4]東京圏の年齢別転入・転出者数の推移 出所:総務省「 住民基本台帳人口移動報告」に基づき、筆者作成

 

毎年、左の棒グラフ(転入者数)が右(転出者数)より高い状況にあることは一目瞭然です。つまり、日本全国では人口減少が進んでいる一方で、東京圏では人口が増えていることを意味しています。

 

また、世代毎の状況をよく見てみると、全体の転入と転出の差のほとんどが20歳代の若者によるものであることが分かります。東京圏以外の日本全国から、毎年、約7万人の若者が東京圏に吸い込まれ、わずか3年で中核市1つ分の人口と同数の若者が地方から消えています。これを「東京圏のブラックホール現象」と呼び、東京圏の物価水準の高さや子育てに不便な環境を引き起こし、少子化の一因になっているとも考えられています。

 

従って、読者のあなたが地方企業あるいは地方に拠点を持つ企業に勤務している場合、自社の所在地近辺の人口が今後どうなっていくかにも留意しておくべきでしょう。総務省発表の『2040年の人口の動向について』という資料の中に、2015年から2040年にかけての市区町村別の人口変動予測が紹介されていますので、是非チェックしてみてください。以下に、人口100万人以上の都市の状況だけ抜粋してみます。

 

<2015年~2040年の人口変動予測>

人口増加:さいたま市・川崎市・福岡市

±0〜▲10%:札幌市・横浜市・名古屋市・京都市・大阪市・広島市

▲10〜20%:仙台市・神戸市

 

こういった大都市ですら人口減少は避けられず、地方の小都市になるとマイナス30%や40%、あるいはそれ以上の減少率も予測されています。大変ショッキングな数字ですが、現実のものとして受け止めて長期的な人材確保の対策を講じましょう。

 

 

石黒 太郎

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部 組織人事戦略部長・プリンシパル

 

 

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