先の見えない少子化。日本企業が若手人材を安定的かつ十分に確保するのは困難な状況が続きます。たとえ確保できても、若手は転職に対する抵抗感が薄いことから、入社後も人材獲得競争を続けなくてはいけません。大都市でさえ人口減少を免れることはできず、地方ではいっそう困難を強いられることに…。人材難を解消できる現実的な選択肢はないのでしょうか? ※本連載は、石黒太郎氏の著書『失敗しない定年延長』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

人材不足も解決?「AIが人間の仕事を担う時代」の到来

人材を確保するにはどうすればいいか。前回の記事『外国人も「日本は選ばない」…八方塞がりな労働力不足の実態』では、人材確保の具体的な対象プールとして上がりやすい「女性」や「外国人」について、データとともにその実現性を解説しました。

 

 

ここまで、日本における生産年齢人口の減少をダイバーシティ経営の推進によってカバーする前提で話を進めてきましたが、定年延長を検討する際には、テクノロジーの進化についても留意が必要です。

 

つまり、今後、様々な技術革新によって、これまでヒトが担ってきた職務がテクノロジーに代替される可能性がある、という視点です。

過去に起きた「テクノロジーによる職務代替」の例

テクノロジーによる職務代替の過去の例として、古くは18世紀から19世紀にかけての産業革命があげられます。蒸気機関の発達により、それまでの家内制手工業の多くは工場制機械工業に取って代わられました。

 

読者の皆さんが学生の頃に世界史を選択していれば習ったはずの「ラッダイト運動」は、1810年代に英国の手工業労働者が起こした機械打ち壊し運動です。その背景には繊維工業の機械化に伴う失業への労働者の危機感がありました。

 

印刷における技術革新もそうでしょう。印刷の世界は、現在のドイツにあたるマインツ出身のヨハネス・グーテンベルクが15世紀に発明したといわれる活版印刷が、数百年に亘って技術の主流でした。20世紀に印刷を事業としていた企業の多くは、活版印刷を前提とした設備を揃え、その効率的なオペレーションに卓越した社員を職人的に育ててきました。

 

それがたった数十年の間に、技術の主流が活版から写植に変わり、さらにはコンピューターで完結するDTP(デスクトップパブリッシング)へと激変しました。この技術革新の波に乗り切れなかった印刷所の多くが廃業し、それらの企業に勤務していた社員が培ってきた活版や写植の職人的知識・能力・スキルは、一般的な労働市場では通用しないものになってしまいました。

 

このような、労働者に求められる知識・能力・スキルの変化・陳腐化は、今後、あらゆる産業で生じる可能性があります。様々な技術革新によってこれまでヒトが担ってきた職務がテクノロジーに代替される、端的に言うとロボットが仕事をするので労働者が必要なくなってくるだろうという見方です。その鍵を握るのが、人工知能、いわゆるAIです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために

石黒 太郎

光文社

シニア活用こそが、人材不足解消の最後の砦。 「定年延長」に失敗すれば、日本経済は必ず崩壊する…。 少子化の進展により、日本の生産年齢人口は急激に減少中。さらに、バブル期入社組の大量定年退職が秒読みに入ったこ…

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