所得とは、収入から必要経費を差し引いたもの
確定申告のポイントについて紹介しよう。勘違いする人が時々いるが、所得と収入は違う。所得とは、収入から必要経費を差し引いたものだ。賃貸経営における収入には、家賃だけでなく、共益費、礼金、更新料等が含まれる。必要経費には、不動産に関わる固定資産税、管理費、修繕費、損害保険料、減価償却費、借入金の利息等がある。
確定申告には「青色申告」と「白色申告」がある。白色申告は、簡易な記帳による帳簿が認められている。一方、青色申告には記帳の義務があるが、税法上の優遇措置を受けることができる。
青色申告には、「青色申告特別控除」「青色事業専従者給与」「純損失の繰越しと繰戻し」の3つのメリットがある。
青色申告特別控除は、所得金額から最高65万円(2020〔令和2〕年より、帳簿を法律で認められた電子保存しているか、電子申告を行う場合以外には、55万円)または10万円を控除できる。5棟10室以上等の事業的規模の場合、不動産所得に関わる取引を正規の簿記の原則により記帳し、貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付すると、65万円か55万円の控除が受けられる。それ以外の場合は、10万円を控除できる。
青色事業専従者給与は、青色申告者の不動産経営を事業的規模で行い、15歳以上の親族が手伝う場合に支払う給与で、必要経費として認められる。一方、白色申告の事業専従者控除は、配偶者の場合86万円等の上限がある。青色事業専従者給与の適用を受けるためには、届出書の提出が必要だ。
純損失の繰越しと繰戻しでは、減価償却費の計上等で、その年の所得が赤字になった場合、その赤字分を翌年以降の3年間にわたって、各年の所得から差し引くことができる。前年も青色申告をしている場合、純損失の全部、または一部を前年分の所得から差し引くことができ、還付を受けることもできる。以上が所得税を節税するポイントだ。
「事業税」は、家賃収入が一定以上の規模である場合、課せられる。5棟10室以上等の事業的規模になると課税対象となり、所得金額から「事業主控除」等を引き税率をかけたものだ。事業主控除とは、一律で年間290万円の控除のこと。不動産所得が290万円以下であれば、事業税は発生しない。税率は、不動産賃貸業の場合は5%となる。ただし、事業税は、所得税・住民税と同様に毎年の不動産の利益に対してかかる税金だが、所得税・住民税と異なり、経費になる。
個人の最高税率60%(所得税45%、住民税10%、事業税5%)近くとなる場合は、法人化によって節税の方法を検討するのも一つの手だろう。
・不動産を売却するとき
不動産を売却するときは、「譲渡所得税」「印紙税」がかかる。
譲渡所得は「収入金額」から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いたもの。不動産を売却したときの譲渡所得も所得の一種なので、所得税と住民税の課税対象になる。給与所得などと異なるのは、不動産の譲渡所得は「分離課税」となっている点だ。給与所得や事業所得、一時所得などは、1年分の所得を合計して税額を計算する「総合課税」だが、譲渡所得は、他の所得と切り離して計算する。
譲渡所得に対する税率は、売却した年の1月1日現在で、その不動産を所有していた期間によって異なる。所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、39.63 %の税率。所有期間が5年超の場合は「長期譲渡所得」となり、税率は20・315%だ。つまり、所有期間5年を境に、譲渡所得税の税率は大きく変わるので注意が必要だ。