介護職員はなぜレクリエーションが苦手なのか?
介護職員の苦手な仕事とは何か
介護職員の多くが苦手としている業務があります。
それはレクリエーションです。その前に介護のことをもう少し話をしておきます。
ひと口に介護と言っても、大きく分けると介護には自立者向けの介護と要介護者向けの介護の2種類があります。この2種類の介護を一人の介護職員が担うことは難しいと考えるべきです。つまり、自立者に対する介護と要介護者に対する介護とは、まったく違ったスキルが必要だということです。
多くの人たちは、この2つを大きなくくりで一つの介護として片付けてしまいます。もちろん、一人の介護職員がどちらの介護もできるのが理想です。少なくとも、私が介護職員として現役だった数十年前は、一人の介護職員が両方の仕事をそつなくこなしていました。
しかし時代が流れ、現在では専門化が進んでいます。多くの老人ホームでは建物内を3つに分けて、1階は自立フロア、2階は要介護者用フロア、3階は認知症専門フロア、というような運営を目にします。そして、各フロアごとに得意な介護職員を配置していることから、同じホーム内であっても、フロアが違うとまったく別のホームになってしまい入居者の家族から怪訝な顔をされるケースもあるようです。
レクリエーションの話に戻します。なぜ、介護職員がレクリエーションが苦手なのかと言うと、レクリエーションのコントロール権を保持できないからです。自立の高齢者の場合、趣味の腕がプロ並みの入居者が多くいるので、多少のレベルでは、けして満足してくれません。書道をしましょうと言うと、元書道の先生だったとか、書道は3段だったというような入居者が老人ホームには掃いて捨てるほどいます。そして、その人たちから、「今度の介護職員さんは、あまり字がうまくないわね」と嫌味を言われてしまいます。かたなしですね。
逆に、要介護状態の入居者、とくに認知症の高齢者の場合、字はうまく書けません。ですから、入居者から「あなたは字が下手だ」とは言われませんが、目を離している隙に墨汁を飲んでしまったり、筆を食べてしまう者も出現します。
そして何より、介護職員にとってつらいことは、集中力がないのですぐに飽きてしまい、複数の入居者がてんでバラバラなことをし始めてしまうことです。もちろん、もう少し真面目にやってくれ! と言ったところで、わかりました、ということはなく、無視されていきます。このときの虚脱感は経験した者にしかわかりません。いかに自分が認知症の高齢者の前では無力なのかを思い知らされます。