おむつ交換が多少下手でも人間性のよい介護職員
ここが介護と医療の違いです。医療は明らかに専門職ですが、介護は実は専門職ではなく総合職なのです。介護技術や介護知識は、介護職員として持っていなければならない多くのスキルのほんの一部であり、介護職員はそれ以外のスキルを持っていないと良い介護職員とは言えない、ということになります。そして何より悲劇的なことは、重要な介護スキルを評価することが一番難しいのです。
介護職員に本当に必要なスキルは人間力、ヒューマンスキルです
あなたは、介護職員のスキルというと、どのようなことを頭に思い浮かべるでしょうか?
おむつの交換スキル、食事介助スキル、寝たきりの高齢者を入浴させるスキル、認知症徘徊高齢者の徘徊を止めるスキル、などなど。介護職員の技能というと、どうしてもこのようなわかりやすい介護技術を想定します。当然ですが、介護福祉士試験にもこのような課題に対する出題が多く出されます。医療業界で言うところの看護師試験などと同じ考え方のもとに成り立っている資格制度だからです。
しかし、医療と介護は似て非なるものです。腕はよいが人間性に問題がある医療従事者と腕は悪いが人間性がすこぶるよい医療従事者と、あなたはどちらに医療を提供してほしいですか? と聞かれたら、多くの人は人間性はさておき腕の良い医療従事者にお願いしたいと回答するはずです。しかし、介護は違います。多少、おむつ交換が下手でも、多少、食事介助の技術が下手でも、人間性のよい介護職員のお世話になりたいと思うはずです。親切な介護職に面倒を見てほしいと思うからです。
しかし、介護職員の評価において、この人間性の評価、親切かどうかの評価などは評価のしようがありません。つまり、正しい評価を受けることができていない介護職員が世の中にはあまた存在し、正しく評価されていない介護職員が介護という仕事から離れていっているのが現状なのです。