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介護の押しつけと考えるか、丁寧な介護と考えるか
誤解のないように言っておきますが、自分でやれる機能がない入居者の場合は、しっかりと介護支援を行います。当然の話です。ここでは、残存機能を殺さないために、あえて自分でやらせている介護支援のことを言っています。そして、放置と書きましたが、厳密には「放置して見守っている」というのが正確な表現になります。
私の経験で言うと、介護職員にとって、見守り介護は意外と厄介な介護になります。自分でやってしまったほうが早いと考える人のほうが圧倒的に多いからです。食事も着替えも、相手が自力でやっている間を見守っているより、自分でやってしまったほうが圧倒的に時間がかかりません。しかし、それでは残存機能が死んでしまい、結果、本人が困るだけという考えからこのような介護方針になっていきます。
したがって、このようなホームに他人に対する依存度の高い入居者が入居すると、「このホームは何もやってくれないホーム」とか「ここの介護職員は薄情な人たちばかり」という評価になってしまいます。そして、その話を聞いた家族がホームに対しクレームをつけるという構図が存在しているのではないでしょうか。
この話は、どちらの介護が正しいのか？ という話ではありません。多くの場合、一方の立場に立って考えた場合、他方の考え方、やり方は間違っているということになってしまいます。さらに、何が、本当に本人のためになっているのかなど誰にもわかるわけがありません。本当に残存機能がなくなることが不幸なことなのか？ 死ぬまで介護職員に甘え続けることができるのであれば、それでいいじゃないか、という考え方もあります。
介護職員は、自身の方針やホームの方針が正しいと考えて、介護支援に取り組んでいます。だから、入居するホームの「介護流派」、言い換えれば「介護の方針」に対する理解は重要だということになります。ここで手を抜くと、入居後、こんなはずではなかったというミスマッチが起きてしまいます。
ある人にとっては、過剰な「介護は押し付けている」と解釈され、ある人にとっては、「丁寧な介護」と言われるのです。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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