もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

介護職員に関して重要なことは量より質

勘違いしないでください。介護職員の配置人数が少ないからといって、そのホームの介護がダメだということではありません。もちろん、人海戦術によって介護職員がたくさんいればできることも多くなりますが、それと介護の質とはまったく関係はありません。介護職員に関して重要なことは、量ではなく質です。質の高い介護職員がいるかどうかが重要になります。

 

小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)
小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)

押しつけ介護流派の多くの老人ホームでは、とにかく何でも介護職員が身体を使って解決を図ります。長年働いてきた高齢者の尊厳を守るために、精一杯の真心で「尽くすこと」が重要だという考え方です。当ホームは、絶対に入居者のリクエストに対し「NOとは言いません」的なことを、このようなホームではよく謳っています。

 

この種のホームは、他人に依存して生きていきたい人にとっては、とてもマッチしているホームです。自分で決断することは苦手なので、何でも介護職員の言いなりになって、「水分補給は大切です。水を飲みましょう」と言われれば「はい」、「栄養を考えて管理栄養士が考えているご飯です。残さず食べましょう」と言われれば「はい」、「今日は天気が良いので少し外に散歩に行きましょう」と言われれば「はい」というように何でも相手が決めてくれる生活が心地よい入居者には、このような押しつけ介護方針の老人ホームは向いています。

 

当然、自分で何でも決めなければ気がすまない人には不向きです。「水分補給のために水を100㏄飲みましょう」「食事は残さないよう全部食べてくださいね」「天気がいいので散歩に行きましょう」「今日は入浴日です」などと言われても、「うるさいな」「水が飲みたければ勝手に飲むから放っておいてくれ」ということになってしまいます。

 

野放し介護方針の多くの老人ホームでは、自分でできる能力があるにもかかわらず、何でも介護職員に依存してしまう入居者には向いていません。傍から見ていると、まるでいじめか虐待のように見えます。「私はご飯が食べれないのよ。食べさせてください」と訴えれば、「Aさんは手が動きますよね。自分で食べてください」と言って、放置です。「洋服が着替えられないのよ、手伝ってください」と言っても、「見てわかりませんか? 私は今何をしていますか? 甘えないでください」。と放置です。

 

次ページ介護の押しつけと考えるか、丁寧な介護と考えるか
親を老人ホームに入れようと思った時に読む本

親を老人ホームに入れようと思った時に読む本

小嶋 勝利

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