常に上位にくる不満は「食事が不味い」
ミスマッチを解説④ 「食事が不味い」とは
食事はきわめて個別性の高いものなので、美味しい、不味いは人それぞれ受け取り方が違うはずです。その上で、食事が不味いということについての話を進めていきたいと思います。
老人ホームが受けるクレームで、常に上位にくる不満は、食事に対する不満です。「食事が不味い」「食事が冷めている」「食材がパサパサである」などなど、あげればキリがありません。とくに味付けに関するクレームの数については、無尽蔵ではないでしょうか? 当然ですが、食事の旨い不味いは、人それぞれきわめて特別な個別なものです。よく「おふくろの味」と言いますが、家庭の味付けに慣れている人にとって、その味付けと違う食事には違和感を覚えて当然だと思います。
入居者やその家族の食事についての大きな勘違いに「食事が不味いのは、給食業者がダメだから」ということがあります。多くの老人ホームの場合、リスクヘッジも兼ねて給食業務を専門事業者に委託しているケースが多いからです。「食事が不味いんだけど」「もっと、まともな食事を出せないの」などと言われると、老人ホーム側は「わかりました。委託先の給食事業者に言っておきます。話しておきます」という返答になります。
これは暗に、「老人ホームは食事作りに関与していません。それは委託先の事業者の問題です」と、入居者や家族に対して頭に入れてもらう目的もあります。
当然、複数回の苦情にもかかわらず改善されない場合、給食事業者を代えるということで解決を図るケースも少なくありません。
それでは、給食事業者を代えれば食事は美味しくなるのでしょうか? 残念ですが、美味しくはなりません。多くの給食事業者は、本部に管理栄養士を配置し、管理栄養士の監修の上で、予算に合わせてメニューを作り、現場は、本部から指示されたレシピに沿って食事を作ります。
したがって「食事が不味い」ということは、本部の管理栄養士の作ったレシピがダメということになりますが、老人ホームの場合、きわめてオーソドックスなメニューの食事しか提供されていないので、この部分で食事が美味しい、不味いとなることは現実的にはありえない話です。