もし親を老人ホームに入居させるとして、まず第一歩として何を理解しておけばいいのでしょうか。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が、親を老人ホームに入れようと思った時に「知っておきたい選び方、探し方」を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『親を老人ホームに入れようと思った時に読む本』(海竜社)から一部を抜粋、編集したものです。

老人ホームは入居者3人に対し職員は1人の配置

ミスマッチを解説② 

「もっとしっかりとケアしてくれると思っていた」とは

 

老人ホームの場合、入居者に対する職員配置数は法律で決められています。たとえば、介護付有料老人ホームの場合は、入居者3人に対し職員は1人の配置です。

 

ちなみに、この1人の配置は一日の配置ではありません。60人の入居者がいた場合、職員数は常勤換算で20人ということになります。この20人が1カ月の間、24時間途切れることなく交代で勤務していますから、イメージとしては昼間帯の職員配置数はおそらく6名程度です。入居者60人に対し、職員が6人です。つまり、入居者10人に対し1人の職員で対応している計算になります。この人数で、食事や入浴、レクリエーション、各居室の清掃などを行います。ホームによっては受診同行も職員が行います。

 

入居者3人に対し職員は1人の配置となる。(※写真はイメージです/PIXTA)
入居者3人に対し職員は1人の配置となる。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

もう少し厳密に言いますと、この20人の中には看護師も含まれています。誤解が多いようなのであえて指摘しておきますが、医療対応が得意な老人ホームの場合、当然ですが看護師が多く配置されています。多くの入居者やその家族から支持されている24時間看護師配置ホームの場合には、さらに多くの看護師が配置されていますから、当然、介護職員数は少なくなります。

 

つまりこれは、20人の職員のうち、看護職員と介護職員の比率がどうなっているのかという問題なのです。読者の皆さんが理解しなければならないことは、看護師配置が手厚い老人ホームは、介護職員が少ないのでレクリエーションなどは当然盛んではないということ。つまり、病院に近い無機質な運営になってしまうということです。当然ですが、高額な費用負担をしなければならないところは、介護職員も国が決めた配置基準以上に配置しているため、この限りではありません。何度も言いますが、「介護の沙汰も金次第」なのです。

 

昼間帯は、おおむね6人程度の職員の目をかいくぐり、認知症の入居者はホーム内を徘徊しています。そして、目を離した隙に転倒骨折なんてことは、よくある話です。さらに、今の老人ホームは重度化、重症化が進んでいるので、深刻な容態の入居者も多くいて、職員は常に緊張と覚悟を強いられる入居者が出現しています。そのような状況の中で、一人ひとりに対し、家族が納得できるような関わりをすることは不可能に近いと、私は判断しています。

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