決済1週間後、アパート入居者の孤独死発見
不動産が安い理由は、買いたいと思う人があまりいない、つまり人気がないということだ。そこで、まず不動産で人気がない物件の特徴を挙げてみよう。
(1)建物が古い
(2)立地が悪い
(3)空室だらけで家賃収入が少ない
(4)借地権が付いている
(5)土地に接道がなく建て替えができない
(6)事故物件である
(7)特殊な物件である
(8)売主に事情がある
主に以上の8つの理由がある。この8つの理由をさらに分析して、高利回りで運用できる可能性があるか、可能性があるとしたら何がポイントになるかを探ってみよう。
事故物件——家賃を下げ、生活保護受給者を対象にして大成功
「事故物件」とは、過去にその物件で自殺や殺人、火災等の原因で死者が出たなど、一般的に居住することに躊躇する「心理的瑕疵」のある物件だ。所有するのはもちろん、借りるのも、事故物件を積極的に選びたいという人は少ないだろう。そのため、当然だが価格は安くなる。
事故物件の場合、不動産を仲介する宅建業者には、宅地建物取引業法上の「告知義務」がある。ただし、どのような亡くなり方が対象か、時期は何年前までが対象かなど、「告知義務」の範囲については明確な内容は示していない。家主として事故物件の購入を検討する際は、購入後きちんと賃貸住宅として運営できるかどうかが大きなポイントとなる。
岩手県の松本昇さんは、決済直後にアパートの一室で孤独死をしている入居者が発見されたという経験を持つ。そのアパートは現在も持ち続けており、全16戸はほぼ満室稼働。購入して4年経つが、利回り22%の高収益物件だ。
松本さんが買ったこのアパートは、当時築35年の古い鉄骨造の2階建てアパートで、間取りは1Kで3点ユニットの単身者向け。お寺とお墓に挟まれた場所で、家賃は当時で3万円ほどだったが、半分は空室だった。
このアパートでの孤独死入居者を発見したのは、決済からおよそ1週間後。死後7日から10日が経過していたという。オーナーチェンジしたことで、管理会社のスタッフが、一軒一軒入居者を訪問したときに1人だけなかなか連絡がつかなかったことから、警察立ち会いのもと確認したのだ。
大半の人がこうした状況なら、どうしていいかわからず、途方に暮れるだろう。だが、松本さんは、「このアパートなら、生活保護受給者を対象に募集しよう」と考えた。冷静に状況を確認すると、既存の入居者に生活保護受給者や高齢者が多かったのだ。結果的には孤独死があったかどうかを気にする入居者は少なく、家賃を安く設定し募集したことから、無事に苦境を乗り越えることができた。
こうした発想にすぐに切り替えられたのは、家主業を始めた2012年から3年ほどの間、築年数の古い物件を購入し、地域で一番安い家賃、礼金・敷金ゼロに設定して、利回り30〜60%を得てきたからだ。古いゆえに、「なかなか賃貸住宅を借りられないような高齢者を受け入れている」と松本さん。高齢者は次に借りられる家を探すのが難しいことから、たいてい最期まで契約する。そのため、このアパートに限らず、孤独死を経験したことがあるという。だが、賃貸経営に大きな影響はこれまであまりないようだ。なお、管理は管理会社に任せている。