どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

緊急搬送受け入れ後の事務局からの電話

当時の私たちの正直な気持ちは、緊急時に病院に対し受け入れを強要できる主治医は、本当に頼もしく、心強かったと記憶しています。

 

小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)
小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)

主治医のA先生とB総合病院のC理事長は大学の先輩後輩の間柄A先生がB総合病院に直接電話を入れれば、どのような入居者であっても即受け入れをしてくれるとか、主治医のZ医師はY病院の医師でもあるため、Y病院には無理がきくから頼もしい、などという話が聞こえてきます。頼もしいと感じたと同時に、私は違和感も覚えていました。

 

救急対応時の裏事情とは?

 

主治医の一人であるT医師は、何らかの理由でR病院に顔がきき、どのような状態の入居者でも、連絡すると二つ返事で快く「救急車を呼んで連れていきなさい。話は私が通しておくから心配しないで」と言ってくれます。

 

もちろん、病院は必ず受け入れてくれますが、受け入れ後、事務方から必ず、「お居室が空いていないので、特別室に入院していただきました。特別室の料金は1泊XX円になります」と言われます。

 

最初は本当に居室が空いていないのだろうと考えていましたが、何度も同じ経験をしていくと、実は居室は空いているように思えてなりません。

 

中には、経済的な理由で、転院を希望するご家族も出てくるありさまです。考えたくはありませんが、受け入れ先がないという人の足元を見て特別室に入院させ、特別料金を負担させるということなのでは?という勘繰りも湧いてきます。

 

当時、緊急対応を経験するたびに、私はこの現状を突きつけられ、高齢者は病気やケガで重篤になったら、下手な抵抗をしないで「死ね」ということなのだろうと、考えていました。長年尽くしてきた高齢者に対し、用がなくなったら「ハイ終わり。ご苦労さま」ということが国の考え方なのだろう、と。がしかし、テレビなどのニュースで、高齢者に限らず、すべての病人に対し、おおむね同じことが起きていると知らされ、さらに唖然としたものでした。

 

しかし、冷静に考えてみれば、この現象は仕方がないことなのかもわかりません。夜間帯は、多くの病院では当直の医師しか置きません。当直の医師は、おそらく法律が定める配置基準で配置しているはずなので、どのような医師でもよいはずです。

 

私の周りにいる医師の中には、専門の病院で専門の症例経験をひたすら勉強したいがために、その病院では安い賃金で働き、生活の糧はアルバイトで病院の当直をやっているという人がいます。多くの病院では、夜間帯の当直医は、必ずしもその道の専門医ということではないのです。

 

つまり、頭を打った患者を、当直の皮膚科の医師が対応するのは、難しいということだと思います。さらに、高齢者特有の認知症などの場合、経験のない医師では診察ができないということになります。

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